「出勤してこそ仕事の効率が上がる? これこそが狭量な考え方だ」(29歳会社員)
「一つの事務所で顔を合わせなければならない仕事もある。在宅勤務には限界がある」(50代会社員)
韓国で新型コロナウイルス感染がひと段落するなか、各企業が頭を悩ませているのが、対面勤務をめぐる摩擦だ。一部の企業は在宅勤務を急速に縮小する一方、MZ世代の従業員の間で「それは時代錯誤だ」という反発が出ていて、全面出勤をめぐる葛藤が起きている。在宅と出勤を合わせた勤務形態もあり、当面は、在宅勤務を巡る論争が続きそうだ。
財界関係者によると、エンデミック後、製造業を中心に全面的に出勤が再開されていると見込まれている。その代表例が、SKハイニックスやポスコ。SKハイニックスは半導体製造工程上の困難を理由に、新型コロナ感染に弱い一部の従業員を除き、コロナのまん延時期にも全面出勤を実施した。ポスコグループの主要な系列会社も、先月1日から順次、全員出勤体制に入っている。
これに対し、MZ世代は事務所への出勤でかえって業務効率が下がると指摘する。
在宅勤務は仕事をする時間と方法を自主的に選択できるため、勤務の満足度が高く、不必要な消耗というものも少ない。出勤するのは時間と場所の制約があるうえ、人材の流出が加速化する恐れがある――こんな声が上がっている。あるアンケート調査では、回答者の62%が「入社するにあたって、在宅勤務の可否を考慮する」と答えた、という例もある。
こうした従業員の強い反発を考慮して、企業の中には、在宅勤務と出勤を混合した「ハイブリッド型」で推移を見守るケースもある。
サムスン電子は部分的に日常の回復を試みるものの、在宅勤務の比率を最大50%程度に維持する。LG電子も「在宅勤務50%以上の義務化」原則を取り下げつつ、組織ごとに状況をみながら在宅勤務を実施している。現代自動車は事務職と研究職の在宅勤務は続ける一方、在宅勤務者の割合は従来の50%から徐々に減らしている。
出勤を増やした企業は、勤務環境を改善して、従業員の納得感を引き出そうとしている。
サムスン電子のハン・ジョンヒ副会長は最近、役職員に福祉の充実をアピールするメールを送ったうえ、職員懇談会で「『WFA』(Work From Anywhere)のような制度により、勤務空間の多様性を図る」と強調した。
SKハイニックスは全社的に「ブランド椅子」の250万ウォン台の「ハーマンミラー(Herman Miller)」の椅子を配置したのに続き、春川レゴランドを全職員に貸すなど、福祉を充実させている。
ただ、新型コロナ感染に伴い、在宅勤務が既に日常化されており、企業も「ソフトランディング」に向けて、必要な措置を施すべき時期に来たと指摘されている。
対面勤務が必須な一部で業種を除いて、在宅勤務が「ニューノーマル」になり得る。全面在宅勤務を知らせたネイバーが代表的だ。同社は7月から、新たな勤務制「コネクテッドワーク」を導入し、週3日以上の事務所出勤か、週5日の在宅勤務のどちらかを選択できるようにした。
淑明(スンミョン)女子大経営学部のソ・ヨング教授は「シリコンバレーのような先端工業団地や、Twitter、Airbnbのようなテック企業のほとんどは在宅勤務を増やしている。新型コロナ感染以後、在宅勤務でも効率的に業務ができるということが証明された以上、伝統的な勤務形態は徐々に力を失うだろう」と見通している。
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