コラム
MONEYTODAY イ・チャンミョン記者
ドラマ「私の解放日誌」は、京畿道(キョンギド)の田舎で両親と暮らす長女ギジョン、長男チャンヒ、二女ミジョンの会社員3兄妹の姿が描かれる。
3人が住んでいるのは京畿道サンポ市。実際にある地名ではないが、ドラマでは水原(スウォン)市近郊と設定されている。
サンポ市はただ距離が遠いだけではなく、交通の便も非常に悪そうだ。
「明るいうちに退社したのに、夜だ。夕方がないよ」。元気なく言い捨てるギジョン。
会食の席ではきまって「車がなくなるのではないか」と心配になり、周囲の顔色をうかがいながら「お先に失礼します」と、やっと切り出すミジョン。
「僕は君に会う時、毎月、君の町まで行ったよ。江北(カンブク)から僕の家までどれだけかかるか知ってる?」。こう恋人に吐露するチャンヒ。
3人のセリフには、京畿道民の悲哀がにじみ出ているという評判を聞く。
一部の新都市に住む人々を除けば、ほとんどの京畿道民は通勤の際、不便を強いられる。国土交通省によると、首都圏から公共交通機関を利用して出勤する場合、出発地から目的地まで平均1時間27分かかる。「人生の20%を通勤に使う」というのが誇張ではないわけだ。
政治家もドラマのセリフを引用して、こうした道民の悲哀を解決する道知事になる、と誓う。そして、広域交通網の新設や、半導体産業団地の誘致のような公約を掲げる。公約が実現すればいい。だが、多くが実現の可能性に欠ける選挙用スローガンに過ぎないようだ。
だが、私は企業と若い世代に希望を見ている。
MZ世代の会社員は最近、通勤に30~40分しかかからない社員と、1時間30分を超える社員に、同じ生産性を期待するのが果たして公正なのか、と問い始めているのだ。
企業も変わりつつある。現代カードは常時、在宅勤務制を導入し、拠点オフィスを設けた。ネイバーは週3日だけ出勤し、2日は在宅勤務を基本制度にしている。週4日だけ勤務し、月曜日は午後1時に出勤したり、金曜日には午後2時に退社したりする、という制度を導入した会社も容易に見つかる。
嬉しいニュースだ。
地方選挙が近づく。毎回、広域交通網新設のような巨大公約だけが注目される。だが、企業の勤務制度を見れば、地域住民の通勤負担を減らす方法は多様だ。地域拠点オフィスなどを設ける企業に、インセンティブを与える――こんな案を打ち出す候補に会ってみたい。
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