故人が生前に残した音声メッセージ、メールなどを学習したAI(人工知能)チャットボットサービス、いわゆる「デッドボット(deadbots)」が台頭し「死亡者が残したデジタル遺産をどのように処理するか」がAI倫理で争点となった。韓国ではまだこれに関する明確な法的規制がない。
デッドボットは故人が残した文字、音声記録、ウェブ上の掲示物などをAIに学習させ、故人の言語使用パターンと性格特性を模写するAIチャットボットをいう。世を去った人の口調や声をそのまま真似ていて、まるで本人が生きているように対話できるのが特徴だ。英ケンブリッジ大学レバーフルームインテリジェンス未来センター(LCFI)研究チームは最近、「故人が残した『デジタル遺産』がAI学習に活用される場合、故人の意思を問わず広報・マーケティング用として使われる可能性がある」と指摘した。
◇「デジタル遺産」の管理
韓国にもデッドボットと同様に故人の写真、音声、映像データを基にAIヒューマンを生成するサービスがある。
故人の姿に似せたAIヒューマンと対話できるようにするサービス「リメモリー(Re;memory)」を提供するディープブレインAIのチャン・セヨン代表は次のような見解を示す。
「亡くなった親に似たAIが登場する瞬間、現場は涙の海になる。残された人々の喪失感を少しでも和らげてあげられるという点で意義がある。会社側はAIヒューマンを生成するための技術を提供するだけであり、映像は遺族が自ら製作する。故人のデータに対する権利と責任は遺族にある。会社レベルでも顧客のデータを他の目的で活用したり配布できないように約款を用意し、施行している」
ただし、亡くなった者が残した「デジタル遺産」をどのように処理するかについては、まだ明確な法的規制がない。KAIST技術経営専門大学院のキム・ビョンピル技術経営学部教授は「個人情報保護法上、個人情報は『生きている個人』だけを含む。ただし『秘密を維持する権利』は死者にも適用される」とみる。
当事者が明らかにしていない情報を「秘密」と定義するが、これは情報通信網法上、事後にも秘密が維持されるべきだということだ。キム教授は「死者が遺族に情報公開の可否を明示しなかった場合、これは情報として提供しないのが正しい」と指摘する。
◇データ活用の可否、ユーザー自らが選択
しかし、デッドボットに使われるメッセンジャー対話データのように、SNSなどで交わしたグループ対話の場合、ユーザーが直接メッセージを伝送したものであるため、個人情報とは見難いという見方もある。このような対話内容をAI学習に活用しても良いかについて、キム教授は「さまざまな法律が適用されるため、まだ明確に整理できない。状況によって、法的判断が変わる可能性がある」と説明した。
高麗大学技術経営専門大学院のイ・ソンヨプ教授は「最近はユーザーがサービスを使用する際、発生するデータの中でどれを残し、どれを削除したいかを選択できるようにする利用約款が登場している。データ活用の可否をユーザー自らが選択できるという手続きが導入されれば、AI学習への活用に関する法的問題に対応するのに役立つだろう」との見解を示す。
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