元徴用工を巡る最高裁判決に基づき差し押さえられている三菱重工業の韓国内資産が、売却されるのかどうか、韓国国内で関心が集中している。一部では訴訟を担当する主審最高裁判事が間もなく退任するため、最高裁の結論が迫っているという観測も出ている。
一方で、最高裁が結論を出すには、主審判事1人の意思や事情ではなく、審理に参加する最高裁判事の意見の一致が不可欠なため、判断時期を予断するのは難しい、という状況にもある。
◇最高裁の判断待ち
元徴用工のヤン・クムドク氏とキム・ソンジュ氏は、日本による植民地時代、三菱が運営していた工場に投入されたが賃金を受け取れず、損害賠償訴訟を請求した。1999年に日本政府と三菱を提訴したものの、日本では2008年11月、原告敗訴が確定した。
だが、韓国の最高裁は2012年、ヤン氏らに損害賠償請求権が認められるという趣旨の判決を下した。これを受け、ヤン氏ら5人は三菱を相手に損害賠償訴訟を起こし、最高裁は2018年11月、5人に8000万ウォンずつ賠償するよう判決を下した。日本企業を相手にした被害者個人の請求権が1965年の日韓請求権協定締結後も消滅していないという趣旨だった。
ただ、三菱は支払いに応じず、訴訟が続く過程でヤン氏とキム氏を除く3人は死亡した。
裁判所は三菱に対し、損害賠償金支払いのため、韓国に保有する特許権6件と商標権2件の差し押さえを決定した。三菱側は控訴したが、最高裁は昨年9月と12月、特許権4件と商標権2件に対する差し押さえを確定した。残りの2件は原告死亡により下級審に留まっている。
その後、差し押さえられた特許権と商標権を売却する特別現金化手続きが進められ、裁判所はヤン氏とキム氏の賠償に関する特許権2件と商標権2件に対して特別現金化を命令した。三菱側は相次いで控訴し、最高裁の判断を控えている。残りの特許権4件に関する訴訟は下級審で審理中。
◇月内結論の観測も
一部では最高裁が今月中に結論を下すという観測が出ている。
最高裁は事件受付から4カ月以内に本案審理をせず、原審を維持する「審理不続行」の判断を下すことができる。ヤン氏事件の場合、先月中旬で受付4カ月を迎え、最高裁が判断を下すのではないかとの見方も出たものの、実現はしなかった。
最近は、キム・ジェヒョン最高裁判事の退任日程を根拠に今週中に最高裁判断が出るという観測も提起されている。キム・ジェヒョン最高裁判事は、三菱側による再抗告事件を審理する最高裁3部の主審で、任期は今月4日まで。2日には退任式が開かれる。通常、退任式以降は裁判など業務に参加しないため、キム最高裁判事がヤン氏事件に対する判断を下すことができるのは事実上、2日が最後だ。
ただ、キム・ジェヒョン氏の退任が判断日程に影響を及ぼさない可能性も高い。
最高裁の審理は主審1人と最高裁判事3人の「小部」で進められ、結論を下すには参加した最高裁判事らの意見一致が必要だ。合意に至らない場合、14人の最高裁判事が審理する全員合議体に回付される。つまり、最高裁判事の議論が終わってこそ、今週中に判断が出るのであって、キム・ジェヒョン氏の退任は決定的な変数ではないわけだ。
©NEWSIS