中国・上海で新型コロナウイルス感染の死者が続出すると、感染が発生したマンション周辺に政府が鉄製の垣根を張り、全面封鎖を強化するなど、中国は「ゼロコロナ」政策から一歩も退く兆しを見せていない。
上海の長期間封鎖で食糧難が発生し、コロナにかかって死ぬ前に飢え死にしそうだと、厳しい防疫に対する住民の不満が高まっている。経済的衝撃も大きい。
その衝撃は中国に止まらず、全世界に拡散している。中国は世界の製造業ハブであるため、中国の工場が生産を止めれば世界の供給網が揺れ、世界経済全体が衝撃を受ける。実際、中国発の供給網崩壊への懸念から、米ニューヨーク証券市場の3大指数が26日、一斉に急落した。
にもかかわらず、中国がゼロコロナを固守しているのは、ひとまず政治的理由のためと見られる。
習近平国家主席は今秋開かれる共産党大会で3選を目指している。習氏はコロナ防疫を誤って党大会の雰囲気を台無しにすることを望まない。
特に中国指導部は、コロナ防疫を西側との体制競争の一環と見ている。一歩遅れて西側のように「ウィズコロナ」に転換した場合、西側の笑いものになるという懸念も「ゼロコロナ」放棄をためらう理由として作用しているようだ。
これは政治的理由に過ぎず、本当の理由は中国の医療システムが「ウィズコロナ」に耐えがたいためと分析される。
中国の医療メディア「中国衛生資源」によると、2021年基準で中国の集中治療室(ICU)の病床数は人口10万人当たり4.37床。米国は35個、ドイツは29個。先進国に大きく及ばない。
このような状況で防疫を緩和し、重症患者が急増すれば、医療システムが崩壊し、死者の急増につながりかねない。
何よりも最も重要なことは、中国人が「水ワクチン」と呼ばれる中国産シノバック(SINOVAC)ワクチンを接種したという点だ。
中国製ワクチンはウイルスを非活性化させて人体に注入し、抗体を作る伝統方式で製作された。これは安価で保管・流通が容易だが、mRNA(メッセンジャーRNA)を使ったファイザーやモデルナのワクチンより効果が落ちる。
世界保健機関(WHO)によると、ファイザーは新型コロナ感染を95%予防するが、シノバックは51%に止まった。
上海で25日、1日の死者が52人に達するなど、感染は深刻さを増している。これは60歳以上の上海居住者の62%だけが予防接種を受け、80歳以上は15%しか接種を受けていないためだ。中国人が中国製シノバックワクチンを信じられず接種を避けたことで低い接種率となった。
2次までワクチン接種を完了した中国の成人は89%で、韓国より低い。韓国は成人の96%が2回以上接種を受けた。3月末までに63%が3度目の接種まで受けている。それも効果が検証されたファイザーやモデルナだ。
その結果、韓国の累積致死率は0.12%で、米国(1.22%)、英国(0.79%)、日本(0.44%)より低い。韓国は効果的なワクチンを追加接種し、世界最低の死亡率を記録している。このため防疫を緩和してもコロナ死亡者が急増していないのはもちろん、むしろ1日の感染確認は減少している。
しかし、中国人は水ワクチンの「シノバックワクチン」を接種し、接種率も韓国より低い。このような状況で「ウィズコロナ」を実施する場合、重病者が急激に増え、死者が急増する可能性が高い。
中国はゼロコロナを放棄しないのではなく、放棄できない可能性が高いように思える。
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