
シンガポールのマリーナベイ・サンズ、マカオのコタイストリップ、米ラスベガスの中心街――世界の観光客が集まるこれらの地に共通するのは「統合型リゾート(IR)」という、都市全体を体験できる巨大複合施設の存在だ。ホテル、ショッピング、エンタメ、展示、カジノを一体化し、観光客の滞在時間と消費を大きく引き上げてきた。
韓国にも仁川・済州にIR施設が存在し、K-POPや韓食、韓流ドラマ・漫画などKコンテンツの魅力も世界から評価を受けている。にもかかわらず、それらを戦略的に結合した「観光産業」としての体系化はまだ不十分であり、IRは今なお「カジノに付随する施設」という認識にとどまっているのが現状だ。
◇世界はIRに国家戦略を乗せるが、韓国は「規制の対象」
例えば、シンガポールには2つのIR(マリーナベイ・サンズ、リゾート・ワールド・セントーサ)しかないが、2023年の売り上げは韓国全体のカジノ産業の約2.6倍に達する。マリーナベイ・サンズ単体で26億8100万ドル、セントーサでも16億8100万ドルにのぼる(韓国カジノ業観光協会調べ)。
フィリピンのマニラにあるソレアリゾートは2024年に616億ペソ(約1600億円)相当のカジノ売り上げを記録。マカオでは「泊まる観光地」への転換を掲げ、ショッピングモールや国際展示、公演コンテンツとの複合化を進めている。
さらに日本も2030年に大阪・夢洲で統合型リゾートを開業予定。ホテル2500室、国際展示場、大型公演施設を備え、カジノ部分は3%に過ぎないにもかかわらず、年間売り上げ約5400億円を見込んでいる。
◇韓国IR、施設は整うも制度と戦略が分断状態
韓国にも仁川の「パラダイスシティ」「インスパイア」、済州の「ドリームタワー」など統合型リゾートに相当する施設は存在する。ホテル、ショッピング、レストラン、公演・展示施設までそろっているが、法的には「カジノの付帯施設」として分類され、広告・誘致の規制も多い。
カジノ設置のためには、外国人専用運営や宿泊施設・国際会議場の設置など厳しい条件を満たさなければならず、柔軟な戦略設計を阻害している。海外ではIRが都市ブランディングや国家戦略と一体化している一方、韓国ではカジノ中心の旧来型制度が足かせとなり、滞在型観光プラットフォームとしての機能を十分に果たしていない。
K-コンテンツという世界市場での資産を有していながら、IR施設と連携する産業設計や政策は不十分なままだ。
◇「規制から産業へ」転換求められるK-IR戦略
カジノ協会によると、「観光客流出」による損失が2030年までに最大約2.6兆ウォンと予想され、そのうち約1.3兆ウォンは国内唯一の内国人利用可能なカジノ「江原ランド」の売り上げ減少とされる。
大阪IRは地理的にも韓国から90分圏内と近く、アクセス・コンテンツ・開放性の面でも韓国型IRの競争力を脅かしている。
韓国文化観光研究院のチョン・グァンミン研究委員は「IRは観光客の滞在時間や消費額を伸ばすナイト・インドア観光の中核インフラであり、産業全体に貢献する存在。韓国のカジノ政策も、ギャンブルや犯罪という否定的フレームを超えて、明確な運営目標と社会的役割を持った産業戦略に進化すべきだ」と提言した。
カジノ協会関係者も「東南アジア各国のIRに観光客が流れる現状では、規制中心の構造から脱却し、K-コンテンツと融合した観光産業戦略への転換が急務だ」と強調している。
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