「往復3時間かかっても方法がないですね」
先月、ソウルで職に就いた20代のリュさんは、就職と同時に仁川(インチョン)の実家で生活するようになった。「70万ウォン(約7万6000円)を超える家賃と生活費を払えば、お金は残らない。往復3時間の通勤時間を我慢しても実家で暮らす方がはるかに良い」。リュさんはため息をつく。
不動産情報プラットフォーム「ダバン」によると、8月にソウル地域の連棟・多世帯用のワンルーム(専用面積33平方メートル以下)の保証金1000万ウォン(約108万円)レベルのウォルセは平均71万ウォン(約7万7000円)、チョンセなら保証金は平均2億1312万ウォン(約2318万円)となる。
チョンセは、毎月の家賃の代わりに「保証金」としてまとまった額のお金を預ける韓国独特の賃貸住宅制度。家主はその資金を運用して利益を上げる。借り主は毎月の家賃が不要で、引っ越しの際、保証金は全額戻ってくる。ウォルセは毎月決められた額の家賃を払う契約で、日本での住宅賃貸契約に似た制度。
ワンルームでも平均70万ウォン(約7万6000円)程度の住居費がかかるため、若者には大きな負担となっている。
水原(スウォン)からソウル市中区に通勤する女性会社員(26)は「1年前に家賃が負担になり、一人暮らしをやめて実家に引っ越した。ソウル郊外に賃貸ルームを探そうとしても、保証金500万ウォン(約54万円)に家賃50万ウォンが必要だ」と不満を表した。
一山(イルサン)に住む男性(27)も「家賃や生活費を考えると、往復2時間の通勤時間は我慢しなければならない。わずかな月給から家賃と生活費まで出ていくと思うと、ぞっとする」と伝えた。
このため、実家がソウルにあること自体が幸運だと考える向きもある。良質の職場がソウルだけに集中しており、若者たちはソウル暮らしを避けられないからだ。
韓国政府とソウル市は、1人世帯青年層の住居費用負担を減らすために多様な青年住宅政策を展開している。
ソウル市は青年安心住宅を通じて安い賃貸料で公共賃貸住宅と民間賃貸住宅を運営している。韓国土地住宅公社(LH)も青年買い取り賃貸住宅事業(公社が住宅を買い取って賃貸する制度)によって相場の40~50%水準の賃貸条件で青年層に住宅を供給している。
ただ、専門家は青年層の住居費用を減らすためには、さらに総合的な対策が必要だとみる。不動産経済研究所のキム・インマン所長は「この事業が青年らの住居費負担を減らすのは事実だが、供給量は需要に比べれば不足している」と指摘する。
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