北朝鮮が国際舞台でウクライナを侵攻したロシアを公開の場で「肩入れ」し、その背景が注目される。普段は「主権国家に対する外勢の自主権侵害行為は不当だ」と主張する北朝鮮が、ロシアのウクライナ領土・主権侵害行為を「支持」するという立場を明らかにしたためだ。
2日開かれた国連緊急特別総会では、ロシアのウクライナ武力侵攻を糾弾し、即時撤収を求める決議案が、加盟国の圧倒的支持の中で採択された。決議案の表決で、賛成は141票、反対は5票、そして棄権は35票だった。
「反対」5票は侵攻当事国のロシア、ロシアとともに旧ソ連の一員だったベラルーシ、さらにシリア、エリトリア、そして北朝鮮だった。
北朝鮮の今回の決議案「反対」票は早くから予見されていた。キム・ソン国連大使が前日の総会演説で、今回のウクライナ危機は米国など西側諸国の「覇権政策」のために起こったものだと、露骨にロシア側に立ったからだ。
しかし、ロシアと同様、米国と対立する中国さえ「棄権」した今回の表決で、北朝鮮が反対票を行使したのは、普段の彼らの主張に照らしてみると、「論理的矛盾に近い」というのが専門家の評価だ。
梨花(イファ)女子大北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「北朝鮮の長年の対外政策の中心的路線の一つが『他国の内政に干渉するな』ということ。米国のいわゆる『帝国主義』行動に反対する『自主』が北朝鮮の対外政策の骨格だが、ロシアのウクライナ侵攻はこれを毀損したも同然」と指摘した。
実際、北朝鮮がこれまで核・ミサイル開発に対する制裁について、自国に対する「二重基準」として反発してきた。米国に対し、すでに開発・保有している核兵器を「なぜ、われわれが持っていってはいけないのか」という論理だ。北朝鮮は同じ理由で、韓国の兵器開発まで問題視している。
だが、北朝鮮は今回のロシアのウクライナ侵攻については自らに「二重基準」を適用したことになった。
専門家は、北朝鮮がこうした「無理強い」をしたのには、単にロシアが主要友好国だという理由だけでなく、ほかの計算があるとみている。
パク教授は「今、北朝鮮は『核保有国認定』という明確な目標に向かって走っている。それ以外のことは副次的なものだ。ロシアが国際秩序を完全に揺さぶっているため、北朝鮮の立場では、それだけでも役に立つ」とみる。
ロシアに侵攻されたウクライナは1994年、核兵器を放棄する見返りにロシア、そして米国など西側諸国から「安全」を保障される内容の「ブダペスト覚書」に署名した。しかし2014年、ロシアのクリミア半島強制併合後、この覚書は「紙くず」になってしまった。ロシアの今回の侵攻も同じだ。専門家が「ウクライナ危機のために核拡散禁止条約(NPT)が脅威を受けている」と指摘するのも、こうした脈絡からだ。北朝鮮はNPT脱退を宣言した後、2006年に核実験を強行し、これを機に安保理レベルの制裁が始まった。
またロシアは先月25日の安保理会議で「ロシア軍撤退」決議案が上程された時、拒否権を行使した。安保理で決議案に採択されるには、15カ国理事国のうち9カ国以上が賛成するとともに、米英仏中露の常任理事国5カ国が拒否権を行使しないことが必要となる。だが、ロシアがこうした安保理体制の弱点を利用して採択を阻止したため、今回の緊急特別総会が開かれることになったのだ。これもまた「国連体制を揺さぶっている」ことだというのが、パク教授の指摘だ。
パク教授は「北朝鮮式の『特異思考』によると、今回の危機によりロシアが自分たちの『反帝国闘争』に加わった、と判断している可能性が高い」と述べている。
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