韓国ソウル・汝矣島(ヨイド)に昨年2月、現代百貨店が「ザ・現代ソウル」を出した。オープン前は、この店舗を巡る百貨店業界の意見はまちまちだった。当初の雰囲気は「これ以上、ザ・現代ソウルが成功するはずがない」というものだった。そもそもショッピングモールのための建物だ。場所が良くない。限界が明らか――という理由だ。
購買力のある会社員は夕方の退社時間になると、すぐに帰ってしまう。週末には誰も訪れず、がらんとする。それが汝矣島の特徴だ。加えて、ザ・現代ソウルのオープン時期が新型コロナウイルス感染の最盛期と重なった。
だが、開店と同時に、ザ・現代ソウルは話題の中心に存在することに。
入店したF&B(食料飲料)店舗は、3時間以上並んでようやく入場できた。複数のブランド商品を集めた店や、家具、家電など、ほとんどの店舗に客が殺到した――。
週末のたった1日だけで売り上げ100億ウォンを記録し、オープン1年で8000億ウォンを達成した。「業界最短期間での売り上げ1兆ウォン到達」が、ザ・現代ソウルの目標だ。
予想をはるかに上回る反応に、研究者たちも関心を示した。
ソウル大学消費者学科のキム・ナンド教授らは「ザ・現代ソウルインサイト」という本から成功の要因を読み解いてみた。
分析において共通するのは「ザ・現代ソウルが先端のライフスタイルを提示する役割を果たした」ということだ。
さまざまな場所を訪れる必要がなく、ザ・現代ソウル1カ所だけでよい。そこにいけば、最新の流行を追うヒップスター(hipster)のライフスタイルを感じ取ることができる。ポーターバッグを背負って、キャメルコーヒーを飲みながら、USM家具を購入することができるのだ。
「ザ・現代ソウルは、訪問客に『ここは私の空間だ』と自己認識ができるような場を提供している。つまり、多くの消費者にとっての『ペルソナ空間』に生まれ変わったのだ」
キム教授はこう指摘する。
現代百貨店は今後、ザ・現代ソウルをソウルの代表ライフスタイルのランドマークに育てようとしている。
©MONEYTODAY