
アリババ、テム、シーイン(SHEIN)など電子商取引(EC)を主軸に韓国市場へ参入していた中国の小売企業が、近年はオフライン領域にも進出の勢いを見せている。韓国の低価格雑貨市場やフードデリバリー分野で本格的に事業を展開し始めており、競争激化によって韓国企業の収益性が圧迫されるとの懸念が広がっている。
中国のダイソーとも呼ばれる生活雑貨ブランド「ヨヨソウウ(YOYOSO)」は、全羅北道群山に韓国1号店をオープンする準備を進めている。ヨヨソウは1000~2000ウォン(約107~約214円)台の低価格日用品や化粧品を中心に取り扱い、韓国の大手均一価格雑貨店「ダイソー」と業態が重なる。現在、東南アジア・中東・欧州など80カ国に3000以上の店舗を展開している。
すでに韓国に上陸している中国発ブランド「名創優品(メイソウ、MINISO)」も攻勢を強めている。昨年12月にソウル大学路に1号店を開店して以降、2025年上半期中に弘大、江南、清州と出店を続け、現在4店舗を展開中。年内には10店舗以上への拡大を計画している。
名創優品はディズニーやマーベルなどのグローバルIP(知的財産)を活用したキャラクターグッズに強みを持つ。江南店はかつてカカオフレンズストアがあった場所に出店しており、MZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)をターゲットとした商品戦略が際立っている。
こうした中国ブランドの進出は、自国市場が成長停滞する中で、韓国市場が依然として高い消費力を持ち、ダイソーが好業績を収めている点に目をつけた結果とみられる。
また、中国系フードデリバリーサービス「ハングリーパンダ(Hungry Panda)」も、韓国でサービスを開始した。現在はソウルの麻浦区・東大門区・広津区といった華僑人口の多い地域で中国料理店を中心に店舗と配達員を募集しており、今後は韓国人消費者への拡大も視野に入れている。
このような動きが続けば、「配達の民族」や「クーパンイーツ」「ヨギヨ」などの既存の国内配達プラットフォームとの競争が激化し、全体の収益性が低下する恐れがある。
一部では、韓国の既存ブランドがすでに市場を押さえていることから、中国企業の進出は当面の脅威にはならないとの見方もある。物流インフラが未整備な状況では、価格の安さだけでは競争を維持するのが難しいという指摘もある。
しかし、急速な店舗拡大や販路確保が進んだ場合には、厳しい競争になるとみられている。潤沢な資本を背景に規模の経済を活用して超低価格戦略を続ける中国ブランドに対し、規模の小さな韓国企業や中小流通業者は押されかねない。
流通業界関係者は「アリババやテムなどの例を見ると、巨大資本で韓国市場を急速に掌握していく動きが目立つ。韓国企業は品質とサービスの信頼性を高めて、中国ブランドの価格競争力に対抗する必要がある」と警鐘を鳴らした。
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