韓国ロッテグループのシン・ドンビン(辛東彬、重光昭夫)会長が、新たな成長エンジンとして掲げている「メタバース」に追加投資し、事業拡大に本格的に乗り出す。メタバース市場の見通しが明るく、最近のグローバル展開による成果も現れ始めており、期待感が高まっている。
IT事業を担う「ロッテイノベート」は10月29日、メタバース子会社の「カリバース(CALIVERSE)」に200億ウォン(約22億円)の資金を追加提供したと公示した。これを含む総出資額は640億ウォン(約71億円)に達する。
ロッテイノベートは、メタバース関連の投資を通じて未来の成長エンジンを確保するために追加投資したと説明している。同社はメタバースなど新規事業の売り上げ比率を長期的に全体の20%以上に拡大することを目指しており、カリバースは追加資金を活用してサービス能力の強化とグローバルマーケティングの拡大に注力する。
ロッテイノベートのこうした動きは、メタバース事業の拡大に向けたシン会長の強い意志が反映されたものと見られる。
シン会長は2021年7月、ロッテグループ社長団会議(VCM)でメタバースをグループの将来の柱とし、関連投資を拡大する方針を示した。当時、ロッテはカリバース(旧ビジョンVR)を120億ウォン(約13億円)で買収し、映画「レディ・プレイヤー1」のようなメタバースの実現を目指して、毎年、大規模な投資を続けてきた。カリバースは、世界的なリアルタイム3Dレンダリングツールである「アンリアルエンジン5」を使い、精密な3D実写キャラクターと超リアルなグラフィックを制作した末、今年8月にグローバル市場への進出を果たした。
カリバースはショッピング、エンターテインメント、UGC(ユーザー生成コンテンツ)などのコンテンツをリアルなビジュアルと独創的なインタラクティブ技術と組み合わせ、超臨場感型メタバースプラットフォーム「カリバース」を制作した。現在、「ニュアス(New Earth)」というテーマのプラネットのみ公開しており、今後は新しいテーマのプラネットを追加して方向性を固める方針だ。
カリバースのキム・ドンギュ代表は「1つのテーマだけでの公開は性急だと思われるかもしれない。だが、これはユーザーの反応を早く収集するための戦略だ。11月初めにはEDM音楽やクエストが楽しめる『トゥモローランド』プラネットをはじめ、K-POPやゲームなどのプラネットも順次公開していく」と述べた。
さらに「今後、(新世界など)競合企業もカリバースを通じて事業を展開できるよう、多様な協力を進めている。有名ブランドもカリバースに関心を示しており、入店を進めている」と強調した。
メタバース事業には、シン会長の息子であるロッテ持株会社のシン・ユヨル未来成長室長も関心を持っている。昨年に続き、今年も米ラスベガスで開催された電子機器の見本市「CES 2024」に参加した。
キム・ドンギュ代表は「ロッテの未来事業としてカリバースが持続可能なプラットフォームになるよう指示を受けている。ロッテは保守的な会社と思われがちだが、シン会長はカリバースに翼を与え、全面的に支援してメタバース市場を牽引しようとしている」と強調した。
メタバース市場の展望は明るく、ロッテのカリバースへの期待も大きい。グローバル市場調査会社「Statista」によると、2022年の世界の拡張現実(XR)市場規模は292億6000万ドルだったが、2025年には777億6000万ドルに達すると見込まれ、年平均成長率は36.2%に達する。
キム代表は「いずれメタバース事業は主流になる。ただ中小企業には難しい分野であり、ロッテが主軸事業として育成しようとする意思があるのは感動的だ」と語った。
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