
韓国で賃金未払い、解雇トラブルなど労使紛争の構図を一変させる「労働者推定制」の導入が最終段階に入った。雇用労働省は、労働節に当たる5月1日の国会通過を目標に法案成立を急ぐ。1953年の勤労基準法制定以来続いてきた「労働者が自ら労働者性を立証する」原則を、使用者側に転換する大きな制度変更だ。
プラットフォーム従事者など約862万人に及ぶ非賃金労働者が、法の空白地帯から抜け出す足掛かりになるとの期待が高まる一方、労働者性の判断基準が不明確なままであることから、現場での法的紛争が噴出するとの懸念も根強い。経営負担の増大が雇用抑制につながる「ブーメラン効果」も指摘され、国会審議は激しい攻防が予想される。
制度の要点は、紛争時の立証主体を180度入れ替える点にある。これまで特定業務委託やフリーランスは、勤務記録や業務指示の証拠を自ら集める必要があり、権利救済を断念する例が少なくなかった。新制度では、他人の事業のために労務を提供した事実が確認されれば、原則として労働者とみなす。使用者が反証できなければ、最低賃金、退職金、社会保険など勤労基準法上の権利が一括して適用される。
EUのプラットフォーム労働指令や米カリフォルニア州の「ABCテスト」と同様、法の空白を埋める国際潮流に沿った施策だ。
最大の不安は法的不確実性だ。今回の法案は新たな明確基準を設けるのではなく、従来の曖昧さを残したまま立証の矢印だけを反転させた。結果として、個別事案ごとに判断を仰ぐ“ケース・バイ・ケース”が常態化し、申し立てや訴訟の急増は避けられないとの見方が強い。
さらに、使用者が労働者性を否定しようとしても、監督官が税務情報の照会や資料提出の強制を通じて関与を深める余地が広がる。権限の拡大が新たな摩擦を生むとの懸念も出ている。
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