2025 年 8月 18日 (月)
ホームエンターテインメントファンは来た。でも不便すぎる…インフラ不足が招く“もったいない韓国観光”

ファンは来た。でも不便すぎる…インフラ不足が招く“もったいない韓国観光” [韓国記者コラム]

ソウルの参鶏湯専門店に並ぶ市民ら(c)news1

米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)のアニメ「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」が想定外のインバウンド需要を呼び込み、韓国観光が再び“天からの贈り物”を得たかのような追い風を受けている。だが、その恩恵を観光産業がきちんと受け止められる体制が整っているかは疑問だ。

本作は韓国制作ではないが、作品中に登場したソウルの銭湯、屋台、韓服体験場、クッパ店などに、ファンたちが“聖地巡礼”に訪れている。

観光プラットフォーム「クリエイトリップ」によれば、作品の公開直後、外国人による韓服体験の予約数は前月比で1400%急増し、K-POPコンサートシャトルバスの予約も133%増加した。チムタク(鶏の甘辛煮)や参鶏湯、カンジャンケジャンといった韓国料理への関心も高まっている。

国立中央博物館では、カチホラン(カササギと虎)や伝統帽をモチーフにしたグッズが連日完売し、1日の来館者数が26万人を突破した。単なる“ファン活動”を超えた明確な観光消費行動だ。

しかし、韓国の観光インフラは今回も波に乗り切れていない。

ファンたちはコンテンツを頼りに動くが、その流れを維持するための体験設計がまるで不十分だ。外国語による案内は少なく、予約や決済は不便で、情報へのアクセスも乏しい。そのため訪問者は個人のブログやファンコミュニティに頼らざるを得ない状況だ。

こうした対応不足は今に始まったことではない。過去にもK-ドラマやK-POPミュージックビデオに登場したロケ地は“写真映えスポット”として瞬間的に消費されたが、滞在型観光につなげることができなかった。

より深刻なのはインフラの不足だ。K-POPファンが最終的に望むのは「ステージ」だが、大規模公演が可能な会場はソウルですら足りておらず、地方に至ってはほとんど整備されていない。「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」に登場する巨大アリーナは南山を背景に描かれていたが、現実にはそのような施設は存在しない。

今回の熱気はソウルから始まったが、作品の影響力は全国に波及可能だ。にもかかわらず、地方自治体がこの動向を観光戦略に取り込もうという試みは稀である。コンテンツは世界中をつないでいるのに、観光は地域分断に閉じ込められている。

こうした構造的な未整備は、観光収支赤字という結果に結びつく。外国人観光客が増えても滞在期間は短く、消費ルートも狭い。コンテンツが開いたチャンスを観光が受け止めきれなければ、“思いがけない祝福”は長続きしない。

今こそ過去の失敗を繰り返すべきではない。コンテンツが公開された瞬間から観光ルートを設計し、ファンデータを分析して需要を予測、予約・決済・案内・グッズ受け取りまでが連動したデジタル基盤の体験動線を構築する必要がある。それによって初めて、今回の追い風を一過性で終わらせず、観光の構造的成長へとつなげられるだろう。【news1 ユン・スルビン観光専門記者】

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