韓国産業研究院(KIET)は10日、「米大統領選挙による韓国自動車産業の影響」報告書を発表した。それによると、韓国の自動車産業が最近、米国市場への依存度を高めるなか、トランプ前大統領が当選した場合、韓国に不利な政策が推進される可能性が高いという。
報告書によると、昨年は韓国自動車産業の対米輸出の割合は42.9%を占めており、韓国の自動車メーカーの国内や海外生産量のうち、46.5%が米国市場で販売されている。電気自動車(EV)の場合、補助金を制限的に支給するインフレ抑制法(IRA)の適用もあり、米国市場で8%のシェアを記録した。
◇脱炭素化推進か化石燃料投資増か
バイデン大統領が再び政権を握ることになれば、現行の政策基調が維持されるとみられる。脱炭素化の推進や中国を牽制するための、友好国との協力強化などの政策も維持されると予想している。
一方、トランプ氏は、化石燃料関連の投資増などが予想される。保護主義政策が強化され、大半の外国製品への関税を一律に引き上げる「普遍的基本関税」を適用するとみている。対中政策の基調はバイデン氏とそう変わらないが、独特で広範囲な制裁手段を強調すると見通している。
供給網においては、両者とも中国を排除する一方、バイデン氏は同盟国との協力を通じて詳細に推進しており、EVの供給網では韓国企業の役割が強化されるとみている。一方、トランプ氏は関税のような手段で自国内の調達を強化することに主眼を置くとみられ、韓国企業は米国現地生産で供給網を調整するなど戦略を修正する必要があると予想した。
◇環境規制に大きな違い
バイデン氏とトランプ氏の公約の中で最も大きな違いを見せるのは環境規制だ。トランプ氏が政権に復帰してEVの需要減少が続く場合、韓国のメーカーは新規工場をハイブリッド車などに転換して需要に対応するとみられる。最近、EVの輸出が増加するなかでも、韓国の自動車メーカーの内燃機関車、ハイブリッド車の競争力も比較的高く、エコ政策基調が弱まることによる需要の変化に否定的な影響は少ないと判断している。
現行の環境規制に対応するため、国内外でEV関連の生産設備への投資を進めている。今後、EVの需要が低迷すれば、エコカー関連部品メーカーの場合、財政に否定的な影響が及ぶとみている。
◇「集中」より「分散」
報告書は「新型コロナウイルス禍以降、比較的需要の回復が早い米国市場を中心に自動車輸出が増加しており、米国市場への依存がさらに高まっている。東南アジア、中東、東欧など多様な市場に輸出を分散することで不安定性を低減し、米国輸入市場においては、輸出及び現地生産を適正水準に調節する戦略も必要だ」と訴えている。
さらに「今回の米大統領選の局面を見ると、エコ政策に対する見解によって、EVなど何か一つに戦略を集中するというのは、非常に危険が大きい」との判断を示し、エコカー戦略で多様な技術競争力の確保が必要だと提案した。EVのほか、ハイブリッド車、水素電池車などを例に挙げている。
EVの供給網から中国を排除する政策が強化された場合には、これに対応する独自の供給網、あるいは韓国企業が主導する供給網の構築を強化すべきだと提案した。
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