
韓国の大手オンライン書店「イエス24」で1週間にわたり発生したアクセス障害を受け、電子書籍への不信感が拡大している。出版業界では「電子書籍市場の信頼性が揺らぎ、売り上げ減少は避けられない」と危機感を募らせている。
イエス24は15日現在、サイバー攻撃によるサーバー麻痺からの復旧作業が最終段階に入ったという。書籍購入やチケット予約、電子書籍サブスクリプション「クレマクラブ」などの主要サービスはすでに復旧済みだが、電子マガジン「サラク」や多言語販売サイトは依然として利用できない状態が続いている。イエス24は「電子書籍データおよび個人情報に流出や異常はない」としている。
しかし、こうした説明にもかかわらず、利用者の間では「いつデータが消失するかもしれない」という不安が拡がりつつある。2023年にはアラジンが72万冊の電子書籍データを流出させた事件も記憶に新しく、今回の「イエス24事態」はその再来とも言える。
オンライン掲示板には「200冊以上の電子書籍が使えず困っている」「30万ウォンのリーダーを買ったのに1週間も使えなかった」などの声が寄せられており、「デジタル幻想論」と題した投稿は数十万回も閲覧された。被害者からは返金や補償を求める声も高まっている。
電子書籍は印刷・保管・流通費が不要なうえに、価格は紙の書籍の60~70%に抑えられ、出版業界にとっては収益性の高い成長分野だった。ウェブ漫画やウェブ小説との連携も容易で、2023年には市場規模が約1兆3000億ウォンに達し、出版市場全体の26%を占めたとされる。
さらに懸念されるのは、違法コピー「テクボン(txtファイル)」への流入だ。海賊版は無料で入手でき、サーバーが遮断されても類似サイトがすぐに再開されるため、正規ユーザーの離脱を招く恐れがある。韓国著作権保護院によると、出版物の違法コピー利用率は14.1%に達している。
出版業界では、セキュリティ強化や信頼性の高い保証制度の導入が急務だと指摘。ドイツでは2022年の民法改正で電子書籍の保守・保証・無償アップデートを義務化、英国は2015年から消費者保護法(CRA)で電子書籍に関する規定を設けている。フランスでは、購入後2年以内の問題については販売業者に責任を課している。
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