1995年生まれの写真作家クァク・イェインさん(28)と1988年生まれの歌手イ・ヘインさん(活動名バーバラ、35)は、いずれもテレビで活躍する「芸能人」を夢見ていた。そしてデビューのためのダイエットを強いられた。
2012年、17歳だったイェインさんは黄色い段ボール箱から「カロリーバランス」を一つ取り出した。人差し指サイズのチーズ味のお菓子1個がイェインさんの1日の食糧だ。
2011年、23歳だったヘインさんも黄色のかぼちゃを眺めていた。150gのゆでかぼちゃが彼女の1食の食事だ。許された食事は1日に2食だけだ。
ダイエットの辞書的定義は「健康の増進のために制限された食事をすること」だった。だが、イェインさんとヘインさんが経験したダイエットは「健康」とはかけ離れていた。
死の目前までダイエットをしなければならず、その経験によって2人は「摂食障害」へと滑り落ちた。そして、2人は摂食障害による心身の後遺症を10年以上経験している。
◇「完成されていない体だ」
ヘインさんは2010年、友人に連れられて偶然参加したある事務所のオーディションに合格し、歌手の練習生としての生活を始めた。
「絶対にデビューしなければ」という考えより、ただ歌をうたえることが楽しかった。
そのうち、放送出演のチャンスが来た。先に入った練習生のデビューがトラブルによって中止になり、予想よりも早くチャンスが与えられたのだ。
その放送でうまく歌うことができ、反応も良かった。幸運が訪れたと思った。
放送後、「良い評価」をされると、「早く痩せなければ……」という圧迫が始まった。
事務所は、テレビに出演するヘインさんの体型について「完成していない体だ」と批評する。「手術をしてみて。脂肪吸引でもいい」。ダイエットの強要は毎日繰り返された。
ヘインさんは当時、かぼちゃ300gを茹でて、150gずつ2回に分けて食べながら1日を耐えた。飢えたお腹をつかんでヨガ、ボクシング、フィットネスに臨まなければならなかった。
そうして1カ月で8kg痩せた。
◇入院でも「太るから食べるな」
ダイエットに対する圧迫は続いた。ヘインさんは1日3回、運動をしながら、煮た食べ物もやめることにした。「ダイエット薬」と呼ばれる向精神性食欲抑制剤も飲み始めた。
体が正常に動くはずがなかった。結局、まもなくヘモグロビン数値が正常値の3分の1に下がって入院することになった。
病床にいたヘインさんに事務所が伝えたのは、次の言葉だった。「太るから、病院のご飯を食べるな」
強迫はヘインさんの心も崩した。
自分の体に対する否定的な感情が募る。食べ物の極端な統制を強いられた状況で、ヘインさんは自らを「価値のある人なのか」と思うようになった。希望はなくなり、不安と怒りが繰り返された。
行動こそ活発だったが、心の中は「私は役に立たない」「死ななければならない」という考えが支配するようになった。
(つづく)
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