
スペイン・バルセロナで3~5日に開催された世界最大のモバイル関連見本市「MWC」の会場では、多くの来場者が新型スマートフォンの体験ブースや、ロボットがダンスやカンフーを披露する展示に集まっていた。
しかし、比較的人だかりの少ない展示もあった。そこには実際のリビングのような空間が再現されていた。
記者がソファに座るとカーテンが開き、スマートフォンを手に取ると壁のテレビが自動で点いた。特別な指示はしていない。AIが人の行動を認識し、状況に合わせて機器を動かしたのだ。
一見すると、よくあるスマートホームのデモのように見える。だが、この展示が強調していたのは「生活の中の人工知能」だった。
この技術は派手でも刺激的でもない。リビングでカーテンを開け、テレビをつける機能は付加サービスのようにも見える。すぐに売り上げを生むモデルでもない。それでもこの「リビングのAI」が印象に残ったのには理由がある。
生活空間で機能するAIは、単なる自動化とは違う。人の行動を「文脈」で理解する必要があるからだ。
ソファに「座った」という動作を認識することと、「休もうとしている」という状況を解釈することは、まったく別の問題だ。前者は検知の領域だが、後者は理解の領域である。
こうした能力は、現実世界で働くAI、いわゆる「フィジカルAI」とも直結する。人の意図や状況を読み取れなければ、ロボットも自動運転も完成しないからだ。
同じ文脈で印象的だったのが、LGユープラスのブースに展示されたLG AI ResearchのフィジカルAI「イクシオ」だ。
イクシオはダンスや派手なパフォーマンスを見せない。ただ静かに洗濯物をたたみ、パンを切る。
展示ブースで会った研究者はこう説明した。
「誤解されがちですが、ロボットが宙返りをしたり重い物を持ち上げたりするのは実は簡単です。しかし、カップの取っ手にひもを通したり、洗濯物をたたんだりする方がずっと難しいのです」
小さな判断ほど、より精密なデータと高度な学習が必要になる。見た目は単純でも、その背後では複雑な認知プロセスが働いている。
1月に米ラスベガスで開かれた世界最大級の先端技術の見本市「CES」でも、ロボットとフィジカルAIの専門家たちは同様の指摘をしていた。
ロボット企業Boston Dynamicsのロバート・プレイター氏は基調討論でこう語った。
「ロボットがマラソンやキックボクシングをする動画は注目を集めるが、それが実用化の準備が整ったことを意味するわけではない。むしろ最近では実装しやすい部類だ。本当に難しいのは、ロボットが実際に役に立つ仕事を見つけ、顧客に価値を提供することだ」
今回のMWCでは、AIの“次の段階”がようやく見え始めた。
ロボットやAIが「本当に人の役に立つ仕事」をこなせるのか。そしてその技術が現場で使える水準に達しているのか。これが世界の専門家にとって重要な評価基準になっている。
MWCに参加した韓国企業や通信会社は口をそろえて「AI企業への転換」を掲げた。しかし転換は掛け声だけでは実現しない。
絵本のようなコンセプトだけのAIを語る段階は、すでに過ぎている。
人にとって本当に役立つAIを「今すぐ」実用化できるのか。そこにこそ、AI企業への転換の鍵がある。【news1 キム・ミンス記者】
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