ソウル・梨泰院(イテウォン)で若者ら150人以上が死亡した雑踏事故(昨年10月)の焼香所をめぐり、遺族側とソウル市の緊張が高まっている。ソウル市は焼香所を「不法施設物」と見なし撤去すべきだという立場を維持する一方、遺族側は激しく反発しており、全面衝突につながる可能性も出ている。
◇「不法施設物」
遺族側は今月4日、事故100日を前に追悼大会を開き、ソウル市龍山区(ヨンサング)の緑沙坪(ノクサピョン)駅近くの梨泰院公園合同焼香所からソウル広場まで行進し、その際、同広場に予告なしに焼香所を設置した。
市が光化門広場内の追慕空間の設置を許可しなかったため、遺族側は「やむなくソウル広場に焼香所を設置した」という立場をとっている。
一方、焼香所がソウル広場の使用許可を取らずに設置されたため、市は「不法施設物」と規定し、当初は6日午後1時までに自主撤去されなければ行政代執行に乗り出すという強硬対応を示した。
これに対し、遺族側は猛反発し、「市民の追慕の邪魔をせず、焼香所運営に協力すべきだ」と要請している。市としても強制撤去は現実的ではないとの見方もあり、期限を15日午前まで先送りし、引き続き、自主撤去を求めている。
◇「セウォル号」テント
韓国では、2014年の旅客船セウォル号沈没事故の犠牲者を悼む焼香所がソウル・光化門広場に設置された際にも同様の混乱が起きている。
セウォル号事故の一部の遺族は2014年7月、真相究明を要求して光化門広場で断食を伴う座り込みを始めた。1カ月後にはローマ法王フランシスコがここを訪問したことで象徴的な場所になり、その後、2019年3月まで焼香所などとして約5年間維持された。
当時、14カ所張られたテントのうち11カ所は市の所有だった。2014年当時、安全行政省は事故直後の4月21日、市に「葬儀と関連した便宜提供、遺族に対する温かい関心と配慮など積極的な支援をお願いする」と文書を送って遺族への支援を要請し、市が光化門広場のテント設置に乗り出したからだ。
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