
ソウル市瑞草(ソチョ)区にある大規模教会「サラン(愛)の教会」が、区当局から出された「地下礼拝堂の原状回復命令」を不服として起こした行政訴訟の控訴審で勝訴した。ソウル高裁は12月11日、サラン教会が瑞草区庁長を相手に起こした原状回復命令の取り消し訴訟で、一審の原告敗訴判決を取り消し、原告勝訴の判決を言い渡した。
同教会をめぐっては、地元住民向けに教会が保育施設を設置することを条件に、瑞草区が2010年に、地下1077平方メートルの道路占用を許可。その後、同教会はこの空間を礼拝堂や映像室、教理学習室、駐車場などとして利用してきた。
これに対し、区民らが「占用・建築許可は不当」として住民訴訟を提起。1・2審は訴訟の対象外として訴えを退けたが、2016年に最高裁がこれを覆し審理差し戻しとした。再審理の結果、2019年に最高裁は「道路法違反があった」として瑞草区庁の処分を違法と判断し確定した。
これを受け、瑞草区は教会に対し原状回復命令を出したが、教会側は2020年に取り消しを求めて提訴。1審では敗訴したが、今回の控訴審で逆転勝訴となった。
判決で裁判所は「道路占用許可が取り消された場合、原則として原状回復義務が生じるが、道路法では例外的に『回復が不可能または不適当な場合』にはその義務を免除できる」と指摘。そのうえで「今回のケースでは物理的には回復が不可能とは言えないものの、安全性などの観点から不適当と判断するのが妥当」と述べた。
同裁判所によると、地下1階から8階にわたる主要施設と構造物を撤去する必要があるほか、建物全体の荷重を支える「メガトラス」や地下外壁は建物と構造的に連結しており、撤去作業には重大な安全リスクが伴うと判断した。鑑定人は、撤去による振動で構造が沈下するおそれや、これに類する先例が存在しない点などを指摘していた。
また、地下水位の低下による地盤沈下が周辺建物の安全を脅かす可能性も排除できないとした。加えて、鑑定によると、原状回復には約1120億ウォン(約124億円)と50カ月以上の工期が必要とされており、極めて高度な技術的困難が伴うと述べた。
区側は「地下空間の能動的・柔軟な活用が可能になる」と主張したが、裁判所は「得られる公共的利益は抽象的であり、原状回復後に再開発する場合にも追加の地盤沈下など新たな問題が生じる可能性がある」と指摘した。
また「行政行為に対する信頼の回復や法治行政の確立といった公共利益は確かに重要だが、原状回復によって国民の生命・身体に回復不可能な損害をもたらすおそれがある場合、その公共利益が必ずしも優越するとは言えない」との見解を示した。
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