ソウル市江南区(カンナムグ)駅三洞(ヨクサムドン)で先月29日深夜、700世帯ほどが入るマンション団地の入り口付近で、40代女性が車で連れ去られる事件が起きた。2日後、容疑者3人は逮捕されたが、女性は忠清北道(チュンチョンブクド)清州(チョンジュ)の大清(テチョン)ダム近くで遺体で発見された。
事件は先月29日午後11時45分ごろに発生した。3分後には「不審者が女性を連れ去ろうとしている」という通報があり、さらに4分後には警察が現場に到着した。防犯カメラの映像をもとに犯行に使われた車のナンバーを割り出し、先月31日には容疑者を逮捕した。女性は連れ去られた後、1時間40分間ほど監禁され、殺害されたという。
逮捕されたのは30代の配達員男性2人と、その大学同級生だった酒類会社社員(35)だった。配達員2人は女性と面識はなく、うち1人が「酒類会社社員が全体の計画を立て、自分たちが加担した」と供述している。
防犯カメラの映像には、抵抗する女性を不審な者たちが車に押し込む様子が収められている。江南はソウルで随一の「安全な居住地域」といわれるだけに、事件は韓国で衝撃をもって受け止められた。
◇「暗号資産関係の夫婦」浮上
ところが捜査が進むにつれ、事件に複雑な背景があることが明らかになった。
被害女性は江南の不動産・金融関連会社に勤め、最近、暗号資産関係者の夫婦と暗号資産(仮想通貨)関連の損失をめぐり法廷で争っていた。被害女性は、夫婦が勧めた暗号資産に投資して、莫大な損害を受けたという理由だ。
さらに被害女性は2021年3月、他の投資家とともに夫婦を脅したなどとして住居侵入・監禁・強要・恐喝などの容疑で警察の取り調べを受けたことがある。
この時、被害女性は酒類会社社員と顔見知りになった。情報を共有する関係になり、社員が女性の会社で働いて報酬を受け取ったこともある。ただ、この社員は「夫婦に財力がある」と判断し、接近していったという。警察は今回の事件で夫婦とこの社員が共謀した可能性を視野に入れている。警察は既に、この社員が夫婦から手付金4000万ウォン(約404万円)を受け取ったという供述も得ているようだ。
このほか警察は、ダム付近の下見に同行した人物(24)についても強盗殺人予備・ほう助容疑で立件する方針だ。事件に関与したのは現時点で計6人となった。
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