ソウル市内で「嫌悪施設」とされる施設の建設を巡り、設置候補地となった地域の自治体が強く反発している。これが原因で、ソウル市と自治体間の対立が激化し、施設建設計画が中止に追い込まれる事態が続いている。
専門家は、住民が嫌悪施設を受け入れられるためには、地域住民への明確な利益供与と協議・協治が必要だと指摘している。
ソウル市は最近、住民の反対や予算問題を理由に、鍾路区母岳洞に計画していた「アルコールケアセンター」の建設計画を撤回した。同センターは、身元引き取りが困難な酔客や応急処置が必要な飲酒者を一時的に保護する施設だ。
しかし、センター建設予定地の周辺には小・中・高校など4校の教育機関と9カ所の保育施設が密集しており、地域の安全が損なわれるとして住民の反対が強まった。
鍾路区のチョン・ムンホン区長も「歓楽街ではなく住宅地にセンターを設置することは治安不安を招く」と主張した。
同様の対立は、ソウル市と麻浦区の間でも見られる。
ソウル市は2026年のごみ埋立処理中止に向け、麻浦区上岩洞に新たなごみ焼却場の建設を進めているが、麻浦区は「周辺環境への悪影響が無視できない」として建設に反対し、政策提言チームの結成や国際フォーラムの開催などを通じて対抗している。
こうした「嫌悪施設」設置を巡る紛争は、住民の反対によって計画が頓挫するケースが増えている。
専門家は、地元住民に確実な利益を約束し、建設プロセスを透明に進めることが重要だと指摘している。
全北大学のソル・ドンフン教授は「嫌悪施設は行政手続きだけでは同意を得にくく、協議が不可欠だ」と述べ、かつて慶州市に建設された放射性廃棄物処分場の事例を引き合いに、住民への利益供与が有効だとした。同施設建設の際には特別支援金やインフラ整備などが供与され、住民の理解を得た。
また、国民大学のチェ・ハンソプ教授も、時間がかかっても住民との協議が不可欠であり、「合意がなければ反発は避けられない」と強調した。
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