2025 年 11月 6日 (木)
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ジェル状にした電解質で電気自動車バッテリーの寿命が2.8倍に向上…韓国の研究チームが開発

アントラセン基盤のジェル電解質の作用原理=UNIST(c)KOREA WAVE

韓国・蔚山科学技術院(UNIST)エネルギー化学工学科のソン・ヒョンゴン教授の研究チームが、韓国化学研究院のチョン・ソヒョン博士、韓国電子技術研究院のファン・チヒョン博士のチームと共同で、バッテリーを高電圧で充電する際に電極から活性酸素が漏れ出す反応を根本的に遮断する「アントラセン基盤の半固体ジェル電解質(An-PVA-CN)」を開発した。

メガ・ニュース(MEGA News)のパク・ヒボム記者の取材によると、高電圧バッテリーの「劣化」の主な原因は活性酸素。研究チームはこれを根本的に遮断する方法により、バッテリー寿命を2.8倍に延ばし、膨張する「バルーニング現象」も6分の1に抑えることに成功した。

高電圧バッテリーは4.4V以上の電圧で充電されるリチウムイオン電池。より多くの電気を蓄えることができ、バッテリーパックを軽量化できる。しかし、充電電圧が高くなるほどハイニッケル正極の酸素が不安定になり、「一重項酸素」という活性酸素に変化して放出される。このとき、活性酸素がガスを発生させてバッテリーの爆発リスクを高め、寿命も短くなる。

研究チームが開発した電解質のアントラセン(An)は、電極表面の不安定な酸素と結合し、不安定な酸素同士が結合する反応段階を根本的に遮断する。不安定な酸素同士が結合すると、活性酸素の「種」である酸素二量体が生成される。また、このアントラセンはすでに生成された活性酸素も捕捉・除去することで、二重の保護機能を果たす。

電解質のもう一つの成分であるニトリル(-CN)基は、正極のニッケル金属を安定化させ、ニッケルが溶け出したり正極構造が変形したりするのを防ぐ。

イ・ジョンイン研究員は「今回の研究は活性酸素の発生段階そのものを遮断した点が差別化される。これまでの技術では、すでに発生した活性酸素を抗酸化物質で後から中和したり、電極を加工して酸素の発生を抑えたりしていた」と説明した。

新しい電解質を適用したバッテリーは、4.55Vの高電圧充電条件下で500回の充放電を繰り返しても初期容量の81%を維持したのに対し、従来のバッテリーは180サイクルで初期容量が80%以下に低下した。バッテリー容量が初期の80%を下回ると寿命が尽きたと見なされるため、寿命が2.8倍に増加したことになる。

また、バッテリーの膨張の原因となるガスの発生も大幅に抑制された。従来のバッテリーが85µm膨張したのに対し、ジェル電解質を適用したバッテリーは13µm程度の膨張にとどまり、体積膨張を約6分の1に抑えた。

ソン・ヒョンゴン教授は「高電圧バッテリーの酸素反応を『電解質設計』の段階で直接制御できることを示した。この原理は今後、宇宙航空用の軽量リチウムイオン電池や大容量エネルギー貯蔵装置(ESS)の開発にも応用できるだろう」と述べた。

(c)KOREA WAVE

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