「毎年10%ずつ成長するブルーオーシャン市場ですが、成果を出した企業は4社程度しかありません。理由は一つです。技術参入障壁のためです」
「3D(3次元)口腔スキャナー」市場の話だ。
3D口腔スキャナーは口の中を撮影し、リアルタイムで精巧な歯科治療用3Dグラフィックを制作するソリューションだ。型抜き(印象採得)より精密で速い上、患者の異物感も少なく、最近歯科・医療界で注目されている。特に現在普及率が20%にとどまり未来成長性が高く、まだ市場を先取りしたメガ企業もないため医療機器業者のゴールドラッシュが続いている。
昨年5月に設立されたスタートアップ「アークリアル(Arcreal)」もその一つだ。アークリアルは最近、DSCインベストメント、インターベスト(Intevest)、SDBインベストメント、シュミット(Schmidt)、クォンタムベンチャースコリア(Quantum Ventures Korea)で61億ウォンのシード投資を誘致し、ゴールドラッシュの第1段階を通過した。ところが、投資家のこの企業に対する評価が尋常ではない。アプローチを変えたところ、成功の可能性が期待以上だという判断からだ。
◇ゲームエンジニアの医療SW創業、市場攻略ポイントを削った
アークリアルは、チョン・スンヒョン代表をはじめ、ゲーム開発エンジニア出身者が集まって創業した企業だ。歯科・医療よりは3Dグラフィック、人工知能(AI)などソフトウェア技術に特化した企業だということだ。大部分のライバル企業が既存の医療機器などハードウェア専門企業である点とは反対だ。
アークリアルのシン・ジョンウォン取締役は「アークリアルは口腔スキャナーの中心的技術が撮影した映像を正確に3Dグラフィックで再現することだとみている。われわれが持っている3Dグラフィック技術などで完成度の高いソフトウェアを開発し、ハードウェアは後付けで完成させようという戦略で創業した」と話した。
実際、医療機器メーカーはハードウェア技術を武器に口腔スキャナー市場に参入しているが、グラフィックなどソフトウェアの完成度に限界を感じているという。企業価値4兆ウォンを認められたベンチャー企業メディット(Medit)が、国内では唯一ソフトウェア問題を克服したという評価を受けている。
シン理事は「メディットが市場で成功してから4年が経ったが、まだこれといったライバル会社が出てきていない。今は全てソフトウェアが核心だということを知っている」と話した。
このような状況で、アークリアルの口腔スキャナーソフトウェア技術は、レベルが高いというのが投資家の判断だ。シード投資に参加したDSCインベストメントチーム長のカン・ソンミン氏は「投資を決めた理由は何よりも『技術完成度』だった。内部評価の結果、撮影映像を3Dで再現するソフトウェアの技術力がトップティア(top-tier)企業レベルだった」と話した。
◇「医療機器メーカーが欲しがるSW…」4兆ウォンのブルーオーシャン市場攻略」
アークリアル側は早ければ来年末からハードウェア部門を完成させ、市場に成果を出せるものと見ている。
カン・ソンミン氏は「ハードウェア部門で協業できるレベルの人材や企業がとても多い」と話した。すでに一部の医療機器メーカーは、アークリアルとの協業の機会を狙っている。シン取締役は「ソフトウェア完成前から様々なところから協業・投資などを提案してきた」と伝えた。
市場は大きいという評価だ。昨年、市場調査機関「Bizwitリサーチアンドコンサルティング」が発表した2020年のグローバル口腔スキャナー市場規模は16億ドル(2兆3000億ウォン)。年平均成長率は10.9%で、2027年には33億ドルに達する見通しだ。最近、ベンチャー投資が萎縮した環境でもシード段階で61億ウォンを誘致できた理由だ。
カン・ソンミン氏は「成功した先輩企業であるメディットを見れば、アークリアルの期待売り上げ額も少なくないだろう。実際、市場に進出する1年余り後までに技術をさらに開発し量産を確実に準備しなければならないため、今回の投資が重要だ」とみている。
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