2025 年 12月 26日 (金)
ホーム政治カネと票が絡む誘惑…韓国・憲法を揺るがす「政教癒着」

カネと票が絡む誘惑…韓国・憲法を揺るがす「政教癒着」 [韓国記者コラム]

京畿道加平郡にある教団本部「天正宮」の出入り口(c)news1

「国教は認められず、宗教と政治は分離される」。大韓民国憲法第20条第2項に明記された政教分離の原則だ。だが、政界を揺るがしている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る金品ロビー疑惑は、韓国の政治がいかにこの憲法原則に鈍感であったかを浮き彫りにしている。

いわゆる「統一教会ゲート」と呼ばれる今回の疑惑は、教団が大統領選挙の過程で政界に組織的に接近し、その見返りとして各種の請託や民願が交わされたというものだ。教団の長年の懸案である日韓海底トンネル構想や対北朝鮮事業を実現するため、政治家との関係構築に動いたとの見方も出ている。宗教が政治に介入し、政治が宗教を利用した典型的な政教癒着の構図だ。

問題は、この疑惑が特定の政権や陣営に限定されない点にある。特別検察の捜査は当初、前政権と教団の結託疑惑から始まった。第20代大統領選で資金や組織を動員し、当時の候補だったユン・ソンニョル(尹錫悦)氏を支援し、いわゆる祈祷師を通じて大統領の妻に高級ブランド品を渡したとの疑惑が提起された。

ところが、「チョン・ジェス」という名前が浮上すると様相は一変した。ロビー活動がムン・ジェイン(文在寅)政権期にまで遡り、現政権の有力人物も捜査線上に上がり始めたからだ。野党の次期釜山市長候補と目されていたチョン・ジェス前海洋水産相は、統一教会側から現金や高級腕時計を受け取った疑いを持たれている。

捜査過程では、教団が長期的な政治戦略を描いていたとみられる状況も明らかになった。2017年、総裁が「政教一致」を掲げる「神統一韓国」戦略を発表して以降、政界ロビーが本格化したとされる。2022年大統領選を前に、与野党国会議員の公認権や2027年の大統領選出馬、青瓦台補佐官進出まで内部で議論されていたとの供述も、公判過程で公開された。教団の構想が単なる空想ではなかったことを示す内容だ。

この事件は、数人の政治家の道徳性に矮小化できる問題ではない。憲法は宗教と政治の分離を定めているが、有力政治家が教団本部を訪れ総裁の前で大礼をしたという証言や、公認、選挙資金、特恵的支援がやり取りされたとする情況は、その原則が現実政治の中でいかに容易く揺らぐかを示している。

11世紀の中世ヨーロッパでは、神聖ローマ皇帝が破門解除を求め、雪の中で3日間教皇の前に跪いた。宗教権力の前に政治権力が頭を下げたこの出来事は「カノッサの屈辱」として歴史に刻まれている。

現代の韓国では、政治が票を求めて宗教に近づき、宗教は権力を夢見て政治の門を叩いた。その間で憲法は後景に追いやられた。もし今回の疑惑が事実と確認されるなら、私たちは21世紀版の「カノッサの屈辱」を目撃しているのかもしれない。【news1 ハン・サンヒ記者】

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