2024 年 12月 22日 (日)
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オーダーメイド型条件付き運転免許 [KWレポート] 韓国・高齢ドライバーの本音 (4)

(写真=gettyimagesBank)(c)MONEYTODAY

韓国で高齢ドライバーの交通事故が増え、警察は高齢者の条件付き免許制度の導入を検討し始めた。一定年齢を超えると、時間帯や場所、車種などを限定して運転を許可する方式だ。米国、ドイツなどがこのような制度を施行している。

韓国警察は昨年、高齢ドライバーを対象に条件付き免許制度を導入する案について外部研究に着手した。2024年まで年間12億ウォン(1ウォン=約0.1円)、計36億ウォンを投じて研究・検討し、2025年から本格的に導入するという目標だ。

高齢者条件付き免許制度は、高齢ドライバーの運転能力に応じて夜間や高速道路の運転を禁止、最高速度制限、先進運転支援システム(ADAS)の装着などの条件をつけ、運転を許可する制度だ。「2024年末に研究結果が出れば、具体的なガイドラインを土台に公聴会を開催し、免許制度の改善に乗り出す」(警察関係者)という流れだ。

高齢化社会が現実化し、高齢の運転免許所持者は最近4~5年間で急速に増えた。2021年末に運転免許を保有している満65歳以上の高齢人口は約402万人で、2017年末の約280万人より43%増加した。昨年2月に発表された国会立法調査処の研究報告書によると、2025年には高齢者人口全体の半分程度である約498万人が運転免許所持者になると予測されている。

警察と共同で高齢ドライバー関連の研究を進めているソウル大学環境大学院環境計画学科のハン・サンジン教授は「高齢ドライバーが車を運転しやすい環境をいかに確保すべきか、また安全運転をどう管理すべきか。両者のバランスを取りながら適切な方法を探す。そのために多様な事例を検討している」と述べた。

◇制限付きながらも運転を許可

現在、高齢者の条件付き免許案としては▽自宅から半径50~100キロの範囲でのみ運転できるようにする▽昼間のみ運転を許可する▽ADASを設置した車両に限って運転を許可する――などが議論されているという。

高齢化問題を先に経験した海外先進国では、条件付き運転免許制度を既に導入しているところもある。

米国イリノイ州は、高齢者が理論教育と道路走行試験を履修した場合、自宅周辺の病院、教会、コミュニティセンター周辺を運転できる条件付き運転免許を発給する。

ドイツでは医師の診断に基づいて、ドライバーに合わせたオーダーメイド型条件付き運転免許を発給する。夜間運転が難しいドライバーには昼間運転だけを許可し、長距離運転が困難なドライバーには自宅から半径数キロ以内でのみ運転できるようにする方式だ。

ハン教授は「正常な運転免許適性基準を満たせなくても、安全な運転を担保できる条件を設定することで、制限付きながらも運転を許可する、ということも可能だ」と述べた。

◇ほぼすべての車両に安全装置義務

韓国では今、高齢ドライバーの交通事故を予防するため、さまざまな安全対策が求められている。高齢ドライバーの視野、反応速度など運転特性を考慮した道路の構造設計から、車両への事故防止装置の装着など幅広く議論されている。

韓国政府は高齢ドライバーの夜間運転を禁止し、免許更新期間を短縮するなど、運転を制限する案も検討している。

そのひとつが、高齢ドライバーを対象にした「条件付き免許制」。高齢ドライバーの運転能力を評価し、夜間・高速道路運転禁止、速度制限などを条件に発給される運転免許だ。来年までに関連研究などを終えて細部を確定する計画だ。現在は運転免許証を返納する高齢ドライバーに10万~50万ウォン(1ウォン=約0.1円)の交通カードまたは地域貨幣を支給する「高齢運転免許証返納制度」だけを運営している。

また、高齢者の車両にADASを装着する案も準備している。今年は農漁村の高齢ドライバーを対象に二輪車・農機に事故自動感知システムもテスト導入する計画だ。

これに先立って政府は、既存のバスや中・大型トラックにのみ装着が義務付けられていた被害衝突軽減ブレーキ「AEBS」を超小型自動車を除くすべての車両に装着を義務化した。

◇高齢運輸従事者への資格検査は強化

タクシー・貨物自動車運転手など、高齢運輸従事者に対する運転資格検査基準は強化する。

現在、韓国交通安全公団は65歳以上のタクシー運転手などの資格維持検査を実施している。ただ、不適合判定を受けても回数制限なしに再検査が可能で、合格者の割合が99.3%に達する。最初から検査を受けていない未受検者に対する処分規定もなく、実効性が落ちるという指摘を受けてきた。

運転資格検査基準が強化されれば、不合格比率が25%台に上がる見通しだ。

道路構造を高齢者にもわかりやすいように改善する策も推進する。韓国国土交通省は2020年に「高齢者のための道路設計ガイドライン」を全面改正した。このガイドラインは、道路を計画する際に、高齢者が安全で便利に利用できるよう設計するための指針だ。地域別道路管理庁が判断し、高齢者に配慮した道路を計画する際に適用する。

国土交通省関係者は「2025年に超高齢化社会を迎えるのを前に、ドライバーの事故予防の重要性が高まっている。高齢者の特性を考慮した安全対策を増やしていく」と述べた。

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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