
アメリカがイランの核施設を電撃的に空爆した。わずか10日前までは「核交渉」の相手国だったイランを攻撃した形で、中東情勢に武力介入したことになる。アメリカの対話提案に応じない北朝鮮の立場からすれば、アメリカのイラン攻撃は自分たちに向けた「警告状」として受け止める可能性が提起されている。
トランプ大統領は21日(現地時間)、国民向け演説で、イランの核施設3カ所を爆撃したと発表した。地下施設を壊滅させることを目的に、6発の「バンカーバスター」ミサイルまで動員し、イランが核施設を簡単に復旧できないように精密攻撃を加えたとみられている。
◇北朝鮮の核施設の位置もアメリカの監視網の中に
アメリカはイスラエルと協力して、イランの核兵器製造施設や核物質生産施設など、主要な核関連施設の位置を正確に把握し、攻撃を実行したと明らかにした。
北朝鮮の核施設は平壌近郊の寧辺と降仙に集中している。北側の慈江道一帯をはじめ、核ミサイル生産施設は各地に分散していると推定されている。寧辺と降仙の位置はすでに広く知られているが、アメリカは公にされていない施設の位置や役割についても、多角的な情報網によってかなりの程度まで把握しているとされている。
そのため北朝鮮国内では、アメリカのイラン空爆を少なからぬ衝撃として受け止める可能性がある。
複数の核施設が単にアメリカの情報網に露出しているだけではなく、「対話が成立しなければ核施設を攻撃することもあり得る」という論理が明らかになったためだ。
同様にアメリカの情報網に主要な動線が露出しているキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の身辺の安全問題とも直結する事案だ。
このような文脈から、北朝鮮は今回の事態を「アメリカからの警告状」として受け止める可能性がある。
トランプ大統領は大統領選の遊説の際から北朝鮮を「核保有国(nuclear power)」と呼び、対話と交渉の再開を提案してきたが、北朝鮮の反応は冷淡だ。当初「核保有国」発言が出たときは、アメリカが北朝鮮の立場を大いに高めたものと解釈されたが、イラン空爆が実行に移された現状では、核を保有する北朝鮮も「攻撃対象」になり得るという意味にも解釈される余地が出てきた。
◇「新たなアメリカ」に対抗する方策
北朝鮮は、今や核施設を攻撃する能力を持つ「新たなアメリカ」と対峙しなければならない状況になった。国内的には対米構想をより深めつつ、外交戦略に新たな視点を加える必要性が高まった形だ。
もちろん、イランと北朝鮮の国際的立場や核兵器保有の状況が異なる点から、単純な比較は難しいが、北朝鮮内部ではアメリカとの対話を当初の計画より早めに進める方向の外交戦略を立てる必要性と、アメリカに対する抑止力を強化するためにロシアとの長期的な密着を強化する方法が主要な選択肢となるとみられる。
ただ、多くの専門家はアメリカの対北朝鮮アプローチがイランへのアプローチとは根本的に異なるとして、アメリカによる対北朝鮮の空爆は想定しにくいシナリオと見ている。しかし、北朝鮮内部で外交戦略の変化の必要性が提起される可能性はあると見られている。
梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「イランは核開発の最後の一線を越えていなかったため攻撃が可能だったが、北朝鮮はすでに核兵器を保有しており、状況は根本的に異なる。トランプ大統領が実際に軍事作戦に踏み切った初の事例であるだけに、北朝鮮も内部的に緊張せざるを得ないだろう。北朝鮮は今回の事態を、核兵器保有の正当性をさらに強化する契機とするだろう」と述べた。
北韓大学院大学のヤン・ムジン総長も「アメリカがイランを攻撃できたのは、中東での主導権を握るための計算された行動だが、北朝鮮との戦争ははるかに大きな戦略的リスクが伴う」と指摘する。
北韓大学校大学院のキム・ジョン教授も「北朝鮮は核兵器を保有しているため、イランのように容易に攻撃できないという点で状況は全く異なる」と述べた。ただ「アメリカが軍事オプションを現実化した点から、北朝鮮内部で『対米強硬外交』の実効性を改めて検討する可能性はある」とも語った。
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