たった一度の人生、後悔なく生きろという意味の「ヨロ(YOLO)」という言葉が韓国社会に大きな打撃を与えたことがある。理由をあえて探すと「われわれの人生が幸せではないから」だ。
国連が実施した国家幸福指数調査で、韓国は10点満点で5.85点だった。いわゆる先進国と呼ばれる経済協力開発機構(OECD)37カ国のうち35位というお粗末な成績を記録した。
国は裕福になっても、国民一人ひとりの生活の満足度は非常に低い。後悔なく今の自分のために消費するYOLO族が増えた背景がここにある。
ただ、本物のYOLOとは何なのかについて知っているYOLO族はそれほど多くない。
真のYOLOは単純に物質的な消費で満足するのではなく、私たちが見失ってきた大切なものを探し出し、それを実践し、幸せに生きるという行為に帰結する。
とはいえ、人生に不必要で雑多なものを取り除き、ひたすら自分のための素朴な本物の人生を生きる人を周辺で見つけるのは容易ではない。
最近、書店で「もう稼ぐのはやめて楽に生きる」という本が目を引く理由だ。
著者は、毎日のように忙しく繰り返される窮屈な日常をやめ、単純で素朴な「自然人の道」を選んだ中年の男性。10年間、江原道(カンウォンド)の山奥に直接建てた「太平家(テピョンガ)」で暮らし、体得した幸せの秘訣を本にした。
人生の後半戦を「ウォールデン森の生活」のヘンリー・デビッド・ソローのように、淡白で賢い人生を生きることを決めた往年のジャーナリストの瞑想エッセイ集だ。
著者は世界日報やMONEYTODAYなど、韓国の主要メディアで22年間、記者として起きてきた都会人の象徴だ。「マネーウィーク」編集局長まで務め、満50歳を迎えた年に会社に辞表を出した。
「よりたくさん稼ぎ、よりたくさん持って、より高く上がる人生」がむなしくなり、もうやめて楽に生きる、という2番目の人生を選んだ。山里に帰村、1カ月120万ウォンで生きていくことを実践し、ヒーリングと癒しの生活を送っている。
「必ずやりたいこと」と「必ずしなければならないこと」の2つだけ除く。他のすべては排除する――著者が生きるのはこの方法だ。そして残ったのが、「読んで、書いて、歩くこと」だ。著者はこんな話をしている。
「幸せとは、血眼になって探しても見つかるものではない。幸せを覆い隠すものを取り除けば、自然に表れるものだ。このような人生の真実と非義を悟れば、人生のすべての問題が解決する」
著者は、もう稼ぐのをやめ、楽に生きることを通じて、簡単で、楽な瞑想方法も伝える。提示したのは「思うがままの瞑想」。
・思う存分、呼吸する
・思う存分、ほぐす
・思う存分、振り払う
・思う存分、広げる
・そのまま止まる
現代人の習慣であるスマートフォンを見ながら、一息に食べてしまう「早食いの食習慣」を直し、とてもゆっくり食べる――これも瞑想になる。
こうした著者の話は、「今ここ」に存在する自分自身を全身で感じる第一歩となるだろう。
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