2025 年 2月 4日 (火)
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なぜ「人気」気象キャスターの死を隠したのか…韓国MBCテレビに向けられた疑惑の目 [韓国記者コラム]

オ・ヨアンナさん(c)NEWSIS

韓国MBCテレビの気象キャスター、オ・ヨアンナさん(1996~2024)が職場でいじめを受けていた疑惑が次第に拡大している。彼女の死から3カ月が経過してようやく訃報が伝えられた。そして今、遺書や加害側の実名まで公になったうえ、訃報を知らせず、死因に関する調査も怠っていたMBCの姿勢にも批判が集中している。世論の圧力を受け、MBCは事件発生から4カ月経ってようやく真相調査委員会を設置し、「迅速かつ正確に調査する」と釈明する事態となった。

オ・ヨアンナさんは昨年9月15日に亡くなった。12月になってようやく訃報が報じられると、MBCは「死亡は事実だ」と認めつつ、「(社内の)部署に確認しておらず、確認してもわからないだろう」と言葉を濁した。「なぜ訃報を公表しなかったのか」という質問にも「通常、社内で発表しないようだ」と曖昧な回答に終始した。

その後、オ・ヨアンナさんの携帯電話から原稿用紙17枚分の遺書が見つかり、そこに同僚から職場でいじめを受けていたという記述があったことが報じられた。

遺族は、加害者として名指しされた2人を相手取り、ソウル中央地裁に民事訴訟を起こした。「MBCに社内で訃報を掲載するよう抗議したところ、『上層部の指示があった』との回答を受けた。組織的に隠蔽しようとしているようだ」。遺族はこう指摘している。

◇「悲劇は防げた」

MBCの対応に批判が殺到している。先月28日、MBCは「オ・ヨアンナさんがフリーランスとして勤務していた際、担当部署や管理責任者に悩みを打ち明けたことは一度もなかった」「報道で『故人がMBC関係者4人に自分の被害を伝えた』とされているが、その関係者が誰なのか教えてほしい」と述べた。また、「事実を確認しないまま、MBCを攻撃しようとする勢力の動きに懸念を表明する」とも発表した。

しかし、遺族によると、オ・ヨアンナさんは生前、MBCの関係者4人に自身の被害を打ち明けていたことが録音データとして残されている。また、彼女は精神科に10カ所以上通院し、何度も自殺を試みたという。昨年8月末には、手首にテーピングを巻いた状態で天気予報を伝える姿も確認されていた。

職場のいじめに関する適切な調査・対応がなされていれば、悲劇は防げたのではないか――こんな指摘が相次いでいる。

オ・ヨアンナさんはアイドル練習生出身で、2017年にJYPエンターテインメントの13期公開オーディションに合格した。2019年には「春香選抜大会」で受賞し、2021年にMBCの公募気象キャスターとして採用された。その後、平日・週末ニュースの天気予報を担当し、2022年にはtvNの人気番組「ユ・クイズ ON THE BLOCK」にも出演した。しかし、この出演を機に同僚から嫉妬を受け、いじめが本格化したと伝えられている。

◇「フリーランスの労働環境改善を」

加害者とされる気象キャスターらがオ・ヨアンナさんを中傷するカカオトークのグループチャットの内容も公開された。その中では「体臭がする」「被害者ぶるのがすごい」などの暴言が飛び交い、「ザ・グローリー」のいじめ加害者を引き合いに出しながら侮辱する発言もあった。

当初、加害者2人の実名のみが公表されていた。だが遺族は「本当の悪魔はイ某とキム・ガヨン氏だ。パク某とチェ某は露骨にいじめていたが、イ某とキム・ガヨン氏は陰湿にいじめていた。パク某とチェ某は葬儀に来たが、イ某とキム・ガヨン氏は姿を見せなかった」と実名を証言した。

しかし、この4人は現在もMBCの「ニュースデスク」に出演し、SNSのコメント欄を閉鎖し、釈明を避けている。このため、視聴者からはキム・ガヨン氏のSBS「ゴールを決める彼女たち」の降板を求める声も上がっている。SBS側は「降板は決まっていない。MBCの真相調査委員会の結果を待っている」と述べた。

業界内では、MBCの組織文化に根深い問題があるとの指摘が多い。硬直した職場環境により人材流出が続き、他局と比べてキャリア採用者への待遇格差も激しいとされる。フリーランス気象キャスターの労働環境改善を求める声も高まっている。

MBCの元気象キャスターであるパク・ウンジ氏は1日、SNSで「私も7年間、あの過酷な環境で耐えてきたから、あの苦しみがどれほど恐ろしく、孤独なものか知っている」と投稿した。また、ペ・スヨン氏は「私がMBCを辞めた時も同じだった。フリーランス気象キャスターの声には誰も耳を傾けてくれなかった。MBC、報道局、気象チーム……。今も何も変わっていないなんて」「真相調査を徹底し、誰もが納得できる形で真実が明らかになることを願う」と訴えた。

◇動き出した現地警察

現在、ソウル麻浦(マポ)警察署はオ・ヨアンナさんの職場いじめ疑惑に関して内偵捜査を開始した。あるネットユーザーが国民申聞鼓(韓国政府のオンライン苦情受付システム)を通じて、MBCのアン・ヒョンジュン社長や担当部署の責任者、同僚気象キャスターらを告発した。証拠隠滅教唆、業務上過失致死、ストーカー処罰法違反などの疑いだ。

MBCの真相調査委員会がどこまで実態を解明できるかは未知数だ。

MBCは先月31日、真相調査委員会の設置を発表し、今月3日には「委員長に法務法人ヘミョンのチェ・ヤンヒ弁護士、外部委員に法務法人バルンのチョン・インジン弁護士を任命した。さらに、社内の人事・法務関連部署の責任者3人も委員として参加する」と説明した。MBCは「遺族と最大限に対話し、真相解明に全力を尽くす。遺族が推薦する人物の委員会参加も検討する」としている。【NEWSIS チェ・ジユン記者】

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