現場ルポ
「ここで火事が起きれば、消防車も上がってこられない。家を改修したいが、トラックを使っても資材を持ってくることが難しい。ところまで、誰が担いできてくれるのか」
ソウル市鍾路区(チョンノグ)・忠臣洞(チュンシンドン)で育ったチョンさん(72)は、こう苦笑した。
「ここでの暮らしも、70年近くになる。私はここでの暮らしに慣れてしまったが、誰がここに来て住もうと思うのか。もう少しすれば、若者のいない、死んだ町になってしまう」
近くのイさん(72)はこう心配した。
忠臣1区域は、2005年に初めて住宅再開発整備区域に選定された。
忠臣洞1-183の一帯、面積2万9601平方メートル、賃貸住宅95世帯を含む計545世帯規模で住宅が建設される計画が策定された。そこには、既存の第1種一般住居地域を第2種住居地域に上方修正して、最高で12階まで建てることができる――という内容も含まれていた。
そして2006年には組合が設立された。2016年には施工会社に現代建設を選定し、地域再開発が進められた。
だが、2017年、状況は急変した。
当時のパク・ウォンスン(朴元淳)市長が、城郭の村の歴史文化価値の保全が必要だという理由で、整備区域を職権で解除した。
だが、後任のオ・セフン(呉世勲)市長は、再開発・再建築規制緩和政策を立て、迅統企画を提案したため、忠臣洞の雰囲気も変わった。
昨年9月から忠臣1区域再開発推進委員会のチョン・ジョンギル委員長が地域再開発のための計画を住民の間で共有している。
「昨年、忠臣1区域再開発の必要性を知らせるためにビラを作り、住民たちに伝えた。住民同意の世論調査も自主的に実施し、賛成の雰囲気を確認した。今月に入り住民同意書を収集し始めた」
チョン委員長はこう明らかにした。
迅統企画は30%以上の同意を確保するだけで推進できる。都市再生地域も申請できるため、同地域も無理なく選定されるだろう――。チョン委員長はこう見通す。「時間がもう少しかかるだろうが確実に再開発を推進する」と説明している。
住民は地域の開発を切望する。
チャン委員長は「今では膝が痛くて階段を上り下りすることも難しく危険だ」と訴える。鍾路という都会に、これほど立ち遅れた地域も珍しい。住宅価格も上がらない。
ただ、地元の不動産仲介者は「地価は既に上昇の傾向がある」とみる。「昨年、推進委が広報する前は坪当たり1000万ウォンレベルだったが、最近は2500万ウォンまで呼び値が上がった。実際に取り引きされたところも坪当たり1700万~1900万ウォンレベルだと聞いている」と話した。
別の不動産仲介業はこんな話をしている。
「最近になって『記事を読んできた』『YouTubeを見てきた』と、客が訪ねてくる。そろそろ開発が近づいているという雰囲気がある」
©MONEYTODAY