
韓国でいま、人工知能(AI)とデジタルヘルス技術を組み合わせた「デジタル治療薬(Digital Therapeutics=DTx)」が、老化の進行を食い止め、時に「逆転」させる医療手段として注目を集めている。従来はAIが新薬候補を設計したり、タンパク質構造を予測したりする役割にとどまっていたが、現在は病気の進行を遅らせ、生理機能を回復させる治療戦略を設計する段階にまで進化している。
デジタル治療薬とは、ソフトウェアを用いて疾病の予防・管理・治療をする新しい医療技術。医師の処方が必要な「医療機器」に分類される点で、一般的なヘルスケアアプリとは一線を画す。AIが取得した睡眠、食習慣、ストレス、認知機能といった生活データを解析し、個人に最適化された行動療法や認知トレーニングを処方する仕組みだ。
たとえば、睡眠データから生物学的な老化が進んでいると判断された場合、呼吸訓練や睡眠リズムの調整プログラムが提案される。つまりAIが診断し、DTxを処方するという「次世代の医療パラダイム」が実現しつつある。
米食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)、韓国の食品医薬品安全処なども、臨床試験で効果と安全性が確認された製品のみをDTxとして承認している。米国ではDTxの一部が「革新医療機器」に指定され、迅速承認プロセスが適用されるようになった。
韓国でも政府による支援が加速している。2023年には、AI企業「AIMMED」の不眠症治療用DTx「Somzz」から始まり、「WELT」の「WELT-I」▽脳神経スタートアップ「nunaps」の「VIVID Brain」▽「Share&Service」の呼吸トレーニングDTx「EasyBreath」――などが次々と承認された。
現在、韓国保健福祉省と健康保険審査評価院は、DTxへの健康保険適用に向けた試験事業を進行中であり、産業通商資源省もAI・ウェアラブル技術を用いた「デジタル融合医薬品」分野の研究開発支援を拡充している。
国内企業も市場を牽引している。「WELT」は不眠症や摂食障害治療のDTxを開発し、生体リズム分析を通じて将来的には「老化マネジメントソリューション」への拡張を計画している。カン・ソンジ代表は「ChatGPTが“本で勉強した医者”なら、DTxは“患者と向き合って学ぶ研修医”だ」とし、AIの学習能力が日々進化している点を強調した。
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