韓国・光州西区(クァンジュ・ソグ)の農村で、60年以上にわたって使用されてきた農道が閉鎖され、村の住民と土地所有者の対立が深刻化している。行政当局は、周辺に仮設道路を整備するなどして仲裁に乗り出しているが、問題解決の糸口は見えていない。
問題となっているのは、西区の月岩(ウォルアム)村と碧珍(ビョクジン)村をつなぐ500メートル余りの農道の一部。土地所有者は、農道の約30メートルの区間(幅2メートル)を標識で封鎖し、車両の通行を不可能にした。標識はアスファルト舗装の上にしっかりと固定されている。
標識には「私有地内への外部車両の進入を禁止する」と土地所有者の名義で記されている。この標識の設置により、村の住民だけでなく、農道周辺にある工場に通勤する労働者や宅配業者も大きな不便を強いられている。特に、この農道が村同士を結ぶ最短ルートであることから、土地所有者に対する不満が高まっている。
通常、車両を利用して月岩村と碧津村を行き来する場合、閉鎖された農道を通るとわずか1分程度だが、現在は大きく迂回しなければならず、10分以上かかっている。また、緊急事態が発生した場合の対応が難しくなるとの指摘もある。
この問題は、今年初めに土地所有者と村の住民の間で発生した対立が発端となった。土地所有者である農業従事者は私有地の利用を巡って一部の住民と対立していた。私有地が「畑」として申告されているにもかかわらず、そこに廃品回収業者を入居させていたことが問題視されていた。住民からの度重なる苦情により、農業従事者は今年初めに廃品回収業者を撤退させ、畑としての状態に戻したが、この際に農道を標識で封鎖した。
この農道は、法的には「非公道」であり、農業従事者の行為を制止する法的根拠は見当たらない。農道は都市計画とは無関係に少なくとも60年以上前にできたもので、標識設置により歩行者や二輪車の通行が妨げられるわけではないため、刑法上の公道交通妨害罪に抵触する可能性も低い。
行政当局は、農道の代替として村の隣にある弾薬庫周辺の小道を4メートル幅に広げ、砂利を敷いて一時的に利用可能な状態にしたが、農業従事者は住民との対話を拒否しており、仲裁は難航している。
70代の地元住民は「65年前からここに住んでいるが、こんな事態は初めてだ。周辺が軍事施設保護区域に指定され、開発もできない地域なのに、何を意図しているのか。緊急時には誰が責任を取るのか。行政は、説得するだけでなく、軍事施設保護区域を解除してまともな道路を整備するか、土地を購入して道路を整備するなどの対策を講じるべきだ」と訴えている。
(c)NEWSIS