
「看板やポスターのデザインを短期でやれば月収350万~400万ウォン」。こうした高額報酬の求人広告に惹かれて、2025年7月にカンボジアへ渡った韓国の若者がいた。だが実態は、犯罪組織による監禁や詐欺への強制参加であり、近年こうした海外就職詐欺の被害が急増している。
news1の取材を総合すると、韓国人を標的とした「海外就職詐欺」の名目で、拉致・監禁・暴行などの被害が続出している。特に「高収入」「学歴不問」といった甘い誘い文句で、就職難に苦しむ大学生や就活生を狙う手口が目立つ。
韓国政府は2025年8月9日、現地当局と連携し、カンボジア南部の犯罪組織を摘発。監禁されていた韓国人14人を救出した。被害者らは、現地の詐欺組織が運営する建物に閉じ込められ、マネーミュールやボイスフィッシングなどの犯罪行為に加担するよう強要されていた。
被害者の多くは「高収入アルバイト」や「海外就職」という文言に惹かれていた。たとえば、同じ組織に監禁されていた慶尚北道出身の大学生(22)は「夏休みにカンボジアで開催される博覧会に行く」と話して出国後、遺体となって発見された。
また、2024年2月18日に公益法人「韓人救助団」によって救出された20代後半の男性も「就職先の会社で耐え切れず、SNSで“高給・住居・航空券支給”といった好条件の仕事を見て応募した」と経緯を説明している。
他にも、インターネット上の求人掲示板や事業提案を見て渡航し、同様に犯罪組織に拘束されたケースも多数ある。韓国内で事務職として働いていた人物が「出張でカンボジアに行け」と言われ、そのまま監禁された事例も報告されている。
カンボジアでの韓国人対象犯罪は急増傾向にある。カンボジア国内で報告された拉致・監禁の被害件数は、2021年にはわずか4件だったが、2024年には220件に増加し、2025年は8月時点ですでに330件に達している。
韓国の対外貿易・投資支援機関である大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は2024年5月、「カンボジア就職詐欺に注意」と題した報告で、「SNSの普及により就職詐欺と関連する求人広告に簡単に接触できる環境が整ってしまった」と警鐘を鳴らしていた。特に、社会経験の少ない若者ほど違法な求人に巻き込まれる危険性が高いとされる。
ソウル大学のクァク・グムジュ教授は「若年層は経済的に非常に困難な状況にある。就職の難しさとお金を稼ぎたいという切迫感が、非合理的な判断を促している」と指摘した。「1カ月働けば借金を返せる」という思い込みが、リスクへの判断を曇らせるという。
また、白石大学警察学部のキム・サンギュン教授は「カンボジアだけでなく中国資本が流入し、ボイスフィッシングや詐欺犯罪組織を運営している」と述べた。警察もその実態を把握しているが、一般市民には十分な情報が届いていないと指摘する。旅行先の危険情報と同様に、就職詐欺などに関する警告をもっと広く知らせるべきだと提案した。
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