韓国発の暗号資産(仮想通貨)「ルナ(Luna)」「テラ(Terra)」の連鎖暴落により、世界の暗号資産市場が大きな衝撃を受けた。関係者の間では今、この「K-コイン」を発行したブロックチェーン企業「テラフォーム・ラブズ(Terraform Labs)」のクォン・ドヒョン代表に関心が集まっている。グローバル暗号資産市場において、たった1日で時価総額2000億ドルを蒸発させ、世界各国の暗号資産投資家を恐怖に陥れた中心人物であるからだ。
クォン・ドヒョン代表は先月まで、暗号資産の寵児とまで言われ、米起業家のイーロン・マスク氏にちなんで「韓国版イーロン・マスク」と称されていた。ところがいまや「シリコンバレー希代の詐欺師」「血液検査のスタートアップ企業『Theranos(セラノス)』の創業者、エリザベス・ホームズ氏と同様、没落した」と、米ブルームバーグ通信や米紙ウォールストリート・ジャーナルなどが報道するほど、その評価は地に落ちた。
エリザベス・ホームズ氏は米名門大学スタンフォード出身のエリートで、「一滴の血さえあれば200余りの病気を診断できる」と主張して巨額の投資金を誘致した人物。“女性スティーブ・ジョブズ”と呼ばれるなど、将来を嘱望されていたスタートアップ代表だった。だが、その後、事業に実体がないことが明らかになり、検察に起訴された。
◇1テラ=1ドルの出発
クォン代表は1991年生まれ。華麗な経歴を持つ青年起業家だ。
韓国で大元(テウォン)外国語高校を卒業した後、米シリコンバレー人材に送り出すための“産室”と呼ばれるスタンフォード大でコンピューター工学を専攻した。卒業後、AppleやMicrosoftでエンジニアとして働き、2015年にはWiFi共有サービス「アニファイ(Anyfi)」を発表した。
暗号資産に関心を持ち始めたのは2016年からという。
クォン代表は最近のブルームバーグとのインタビューで「2016年に分散ネットワークを研究し、ビットコインに夢を託した」と明らかにしたことがある。韓国ソーシャルコマース「TMON」のシン・ヒョンソン創業者と意気投合し、事業モデルに発展させるまでに3年かかった。2人で、日常生活で使える暗号資産に没頭した末、2018年、テラフォーム・ラブズを設立し、翌2019年に特異なアルゴリズムを採用してコインを発行した。
これがまさにステーブルコイン(価格が固定された暗号資産)「テラ」と、これと連動したコイン「ルナ」だった。
クォン代表は「テラブロックチェーンシステム」の基本通貨であるルナの供給量を調節し、テラ1個の価値を1ドルに合わせる「1テラ=1ドル」公式を導入した。また、テラを預ければルナに換えられ、最大20%の利率を約束する方法で投資家を集めた。
◇「ビットコイン・クジラ」
テラが規模を拡大したのは、脱中央化の金融ブームが起きてからだ。
変動幅が激しい他の暗号資産とは異なり、価値の維持が目的のステーブルコインは、暗号資産をベースとしたのDeFiサービスを効果的に実現する手段として浮上した。新型コロナウイルス感染のパンデミックが誘発した莫大な規模の流動性も、テラを育てるのに一役買った。
世界の投資家の投資熱が高まり、テラをベースとしたDeFi預置金は昨年、2位に上がった。テラの米ドルによるステーブルコイン「テラUSD(UST)」は時価総額が一時、180億ドルに達するほど好調だった。テラ関連の暗号資産ルナの時価総額は昨年1年間で100倍以上に急増した。
これら両コインが時価総額上位の暗号資産に急浮上し、市場ではクォン代表も大物となった。
彼はテラの価値を支える安全装置の一環として15億ドル分のビットコインを買い入れ、暗号資産の大手を意味する「ビットコイン・クジラ」として注目されたりした。
©MONEYTODAY