韓国で非常戒厳宣布や弾劾を巡る政治的混乱の中、「2次戒厳令」に関する陰謀論が再び台頭している。今年の旧正月連休中に戒厳令が発令される可能性があるとする主張が一部で広がり、社会的な不安が助長されている。
政府と与党「国民の力」が1月27日を臨時公休日に指定したことについて、経済刺激を目的とした措置と発表されたが、一部では「局面転換を狙った隠れた意図があるのではないか」と疑念を抱く声もある。
SNSやオンライン掲示板では「臨時公休日に戒厳令が発令されるのではないか」「休み中に内乱共謀者が行動を起こすのではないか」といった反応が相次いでいる。昨年の国軍の日が臨時公休日に指定された際にも、戒厳準備説や歴史的背景に関する批判が噴出したことが記憶に新しい。
専門家の多くは、ユン大統領が現在職務停止中である点を踏まえ、「2次戒厳令」は現実的でないと指摘している。軍統帥権がチェ・サンモク(崔相穆)大統領職務代行に移っている状況で、新たな戒厳令を発令する可能性はほぼ皆無だという。
ある軍事専門家は「大統領が不在の状態で権限代行者が戒厳令を発動することはあり得ない」と述べ、「陰謀論に過ぎない」と一蹴している。
それでも陰謀論が根強く残る背景には、社会全体の不安と不信感が影響している。韓国社会では昨年、「非常戒厳」が実際に宣布されたことで、これまで非合理的と見なされてきた主張が勢いを増す傾向が見られる。
特に、政治的対立の激化が陰謀論を助長しているとの見方もある。弾劾反対集会やオンラインコミュニティでは、事実に基づかない主張が拡散しやすい環境が整っている。例えば「中国と北朝鮮が不正選挙に関与した」「共に民主党のイ・ジェミョン(李在明)代表はスパイだ」といった根拠のない主張が広まっている。
専門家は、社会的信頼の不足が陰謀論の構造的な原因であると分析する。高麗大学のキム・ユンテ教授は「不合理だと考えられていた戒厳令が現実になったことで、非合理的な陰謀論がいっそう勢いを増している」と述べた。また、意見の対立が激しい社会において、自分の立場を補強する情報だけを受け入れる「確証バイアス」も影響していると指摘している。
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