
韓国が独自の核武装を推進しても、北朝鮮の挑発を抑止するには現実的な限界がある――こんな専門家の分析が示された。韓国での核武装の議論は、米国など国際社会との「外交的取引コスト」ばかりが発生し、安全保障上の利益は大きくないという指摘だ。
慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授と米ノースグリーンビル大学のイ・ジョンウン教授は、このような内容を盛り込んだ論文「パンドラの箱を開ける:韓国の核武装は実現可能で望ましいのか」を共同執筆した。この論文は仁荷大学国際学研究センターが発行するSSCI級の国際学術誌『パシフィック・フォーカス(Pacific Focus)』に最近掲載された。
論文は、トランプ米大統領が再任直後から北朝鮮の核保有国としての地位を認めるような発言を繰り返していることに言及し、韓国国内でも核武装の必要性についての声が高まっていると指摘した。
特に、トランプ大統領が在韓米軍の削減や戦略的柔軟性の強化など「韓米同盟の現代化」を示唆したことで、韓国内では米国の核の傘に対する不信感が大きくなり、それに伴って独自の核能力保有を支持する世論も強まっていると説明した。
しかし論文では「核武装をした国が外部の脅威から安全が保障されるという一般的な認識があるが、実際には核兵器は通常の軍事衝突を抑止するうえで限界があり、意図せず対立を悪化させる可能性もある」と指摘している。
また、核兵器があまりに破壊的であるため、大部分の紛争で簡単に使用できず、むしろ限定的な抑止力しか持たないという、いわゆる「核兵器の逆説」を根拠として提示した。
例えば、北朝鮮のドローン攻撃やサイバー攻撃、汚物風船による挑発に対し、韓国軍が核兵器で対応する可能性は現実的に極めて低いという。
一部には、韓国が核能力を保有すれば、将来的に北朝鮮に「相互核廃棄」を提案する交渉力を持ち、最終的には「朝鮮半島の非核化目標」が促進されるのではないかという期待もある。
だが論文では「韓国の核兵器開発にはかなり長い時間がかかるはずで、その過程で北朝鮮や中国、あるいはロシアが何の対応もしないとは考えにくい。特に北朝鮮が韓国の核施設に対する妨害工作を仕掛けたり、先制攻撃を試みたりするなど、核軍拡競争が加速する危険性が大きい」と述べている。
また、韓国の核武装は、北東アジア地域の安全保障危機を必然的に高めざるを得ず、これは中国・ロシア・北朝鮮などの「大陸国家」と、日本・米国・韓国などの「海洋国家」との地政学的対立をさらに深めるだろうと展望している。
韓国が核武装を推進する過程では現実的な制約も多い。まず技術的な面では、韓国は兵器級プルトニウムを生産できる原子炉と、それに見合った再処理インフラを構築しなければならないが、韓国の高い人口密度や強力な地域住民の反対、環境問題などを考慮すると、これらの施設を建設するのは容易ではない。
また論文では、韓国が核を保有するにはトランプ政権の承認はもちろん、米国議会の同意も取り付けなければならず、これは韓米間の信頼を大きく損なう可能性があると予想している。
結果的に「韓国の核武装議論は、安全保障上の利得が極めて限定的であると同時に、国際社会で否定的な取引コストを引き起こすと見られる。核武装は万能の解決策ではない」と提言している。
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