米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)の韓国ドラマ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」のヒットによって、くしくも韓国における校内暴力の残酷さがクローズアップされた。
校内暴力はなぜなくならないのか。過去数十年間にわたり、多様な解決策が出されてきたが、問題は今も繰り返されている。学生や教師、政府関係者の他、幅広い関係者に話を聞き、課題を探ってみた。
◇堂々とふるまう加害者
「みんな、私は2カ月後に出るよ。手紙を書けよ」
同級生を苦しめた末に、少年院に行くことになった「イルジン」ことイ・ジョンフン君(仮名・17)が、フェイスブックにこんな書き込みをした。
少年院の住所も記していた。イ君の堂々とした姿勢に、周りの友人たちは無力感を覚えた。イ君の書き込みを見たキム某さん(17)は「イルジンは反省するどころか、少年院に行くことを誇りに思っているのではないか」と首をかしげる。「学校や社会では、校内暴力の加害者を処罰すると言うが、私は信じない」
イ君のように、校内暴力の加害者が堂々とふるまう事例は少なくない。教師や学校側が、都合の悪い事態をもみ消して、事件を隠そうとするようなケースでは、加害者側がより開き直ってしまう。
その一方で、被害者の絶望感は倍増する。
実に深刻な問題だ。現場の教師や専門家らは、加害者の処罰を制度化し、長期的には教育文化そのものを変えなければならないと強調する。
◇「感情的に接するのが問題」
校内暴力は、原因を特定するのが容易ではない。集団生活と群衆心理、社会の雰囲気などが複合的に作用するためだ。23年目を迎える中学校教師のソン某氏は「校内暴力は、単に生徒と保護者の問題ではなく社会全体の雰囲気が作用する」と指摘。「子どもたちがあまりにも個人主義化した社会で育ってきたことが、大きな影響を与えている。どうやら解決策はなさそうだ」と話す。
首都圏のあるニュータウンの中学校に勤める34年目の教師、チェ某氏は、教育現場での限界を感じるという。「校内暴力については、教師が注意、指導していないわけではない。ただ生徒のそもそもの性格と家庭環境が影響を及ぼし、道徳性は幼い時に全て作られている。やってはいけないと知りながらもやるのが問題だ」
4年目の教師、イ某氏(33)は「血気盛んな時期の青少年を30人ずつ同じクラスに入れると、当然葛藤が発生する。そうした葛藤を合理的かつ理性的に解決しようとせず、感情的に接するのが問題だ」と話す。
◇カギは「社会がどう対処するか」
人格が未熟な生徒たちの暴力問題はいつでも発生しうるが、カギになるのは、大人たちと社会がどのように対処するかだ。校内暴力防止に向けた教育など予防策はもちろんだが、再発防止のための事後的対処も不十分だとの指摘もある。
解決策の一つに、加害者への処罰強化が挙げられる。処罰が適切でないため、被害生徒も申告をあきらめるという面があるためだ。近年は、校内暴力に対する認識が変化し、申告件数は増加傾向だが、統計に含まれない事件はさらに多いと当事者たちは口をそろえる。
2021年の「117校内暴力申告センター申告統計や類型別現況(校内暴力)」によると、昨年受け付けた校内暴力の申告は、3万7845件で前年比1万861件増加した。半面、昨年の「校内暴力1次実態調査」では、校内暴力被害生徒の中で被害事実を117校内暴力申告センターに申告した比率は2.1%と集計された。
校内暴力対策を進めるには、政界の立法支援が重要だ。毎回、校内暴力が問題化すると、競って法案を発議する動きがみられるが、いったん関心が冷めると、議論に進まないのが現実だ。
教師の体罰や強権的指導が否定される中で、家庭教育に対する支援も求められる。加害者へのアプローチ、被害者保護はもちろんだが、校内暴力の処理過程で、両親の教育方法や、子どもとの絆なども点検が必要だという話だ。
学校暴力研究所のイ・ヘジュン所長は次のように強調する。
「保護者の多くは校内暴力の処理手続きに執着するが、現在の学校システムでは誰でも被害者、加害者になりうる状況だ。両親が『私の子どもも加害者になる可能性がある』という警戒心を持つべきだ。校内暴力に遭うと、一瞬にして家庭が崩れる。だからこそ普段から強い関心を持つことが重要だ」
(つづく)
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