
トランプ米大統領とプーチン露大統領による会談が合意に至らなかったことで、北朝鮮が外交的に有利な立場を得る可能性があるとの見方が韓国専門家の間で広がっている。韓国政府にとっては、今後の朝鮮半島情勢における「コリア・パッシング」への懸念も強まっている。
米露首脳会談は約3時間に及んだものの、最大の焦点であったウクライナ停戦に関して合意には至らなかった。
専門家は「戦争が継続することで北朝鮮はロシアとの“血盟”としての存在感を示しつつ、アメリカに対しても『交渉が必要な国家』としての影響力を発揮できる」と分析している。
梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「ロシア・ウクライナ戦争が簡単に終結しないというのは、北朝鮮にとって悪い話ではない。戦争が続くことで北朝鮮はロシアに兵士や軍需物資を供給し、その見返りに影響力を拡大できる」と語った。
また、元駐ロシア公使で、現・朝鮮半島安全保障戦略研究院のユン・チャンヨン院長は「プーチン大統領は今回の米露首脳会談に先立ち、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記と水面下で連絡を取り合っていた。ロシアが北朝鮮の戦略的価値を高く評価している証左。キム総書記は“プーチン氏だけでなく、トランプ氏も自分との会談を望んでいる”という認識から、いっそうの自信を深めているはずだ」と分析した。
今回、戦争当事国であるウクライナが交渉の場に不在だったことを受けて、韓国国内では将来的に朝鮮半島問題においても韓国が排除されるのではないかとの懸念が浮上している。実際、プーチン大統領は会談中、ウクライナがドンバス地域の放棄を受け入れれば停戦交渉が可能になるとの見解を示したとされる。
専門家は「将来の米朝首脳会談においても、韓国の利益が排除されるリスクがある」と指摘し、米国だけでなく日本などの同盟国と連携して「北朝鮮を核保有国として認めることはできない」との明確な立場を維持すべきだと訴えている。
現在、北朝鮮は米国との対話再開の条件として「非核化」ではなく、「核保有国としての地位」を認めることを求めている。今後、米朝会談が実現すれば、「核兵器の軍縮や凍結」などの主張が展開される可能性が高い。
外交安全保障の専門家は「トランプ氏が北朝鮮との対話を進める場合、北朝鮮はロシアを経由してより有利な交渉条件を構築しようとするだろう。そのためにもロシアへの支援を継続し、米露双方に対して存在感を強調する戦略を取るだろう」と分析する。
北朝鮮は昨年10月、約1万1000人の兵力をロシアに派遣。今年初めにはさらに4000人を追加派遣した。そして最近、約6000人の工兵部隊を新たに派遣する計画もあるとされており、ロシア・ウクライナ戦争における“キープレイヤー”としての立場を示す意図があるとみられる。
一方で、韓国がロシアとの外交関係を修復し、北朝鮮問題の仲介者としてロシアの役割を活用すべきだという指摘もある。外務次官経験者は「北朝鮮と血盟関係を結ぶロシアの影響力は、今後の朝鮮半島問題でより一層重要になる。韓露関係を建設的に管理する方策を模索すべきだ」と語った。
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