2025 年 11月 21日 (金)
ホーム社会「遺体搬送費170万円」 飲酒運転被害の日本人遺族が直面した「悲しむ余裕なき」経済的重圧

「遺体搬送費170万円」 飲酒運転被害の日本人遺族が直面した「悲しむ余裕なき」経済的重圧 [韓国記者コラム]

(c)news1

旅先の韓国で飲酒運転によって命を奪われた日本人女性。その母親が遺体とともに帰国するために必要だった費用は1500万ウォン(約170万円)だった。思いもよらぬ突然の悲劇の中、彼女はその金額の大きさに言葉を失った。

遺族に悲しむ時間すら与えず、重くのしかかる経済的負担。それが、現在の韓国における「外国人被害者の現実」だ。

世論の関心が高まり、日本国内でも報道されたことで、加害者は「遺体搬送費用を負担する意思がある」と明らかにしたという。警察は通訳を手配し、葬儀を支援する担当警官を配置するなど、可能な限り対応にあたっている。

だが、制度上の限界は明らかだ。

韓国には「犯罪被害者保護法」があり、命や身体に重大な被害を受けた被害者や遺族には国家が補償金を支給する。しかし、外国人への支給は極めて限定的だ。

例えば、同法第23条では▽当該外国人の母国が同様の制度で韓国人に保障している場合▽韓国人の配偶者・子の養育者である場合――といった条件が課されており、今回のようなケースでは対象外となる。

さらに、「過失による事件(例:交通事故)」は原則としてこの制度の補償対象には含まれない。

人権委員会は法改正を求め、より多くの被害者に補償が行き渡る制度の整備を促しているが、法務省は「過失による事故は通常保険でカバーされており、国家の責任は限定的」との立場を崩していない。

その結果、外国人遺族は通訳を雇い、弁護士を探し、民事訴訟を通じて補償を求めるしかなくなる。時間も、言葉も、制度も――すべてが彼らの悲しみを遮ってしまう。

こうした「支援の空白」は、個別事件だけでなく、社会的な大惨事でも同様に起きている。

2022年10月の梨泰院(イテウォン)雑踏事故。韓国政府は外国人犠牲者にも1500万ウォンを上限とする葬儀支援金を約束したが、その後、イラン人遺族に対して適切な案内がなされなかったことが明らかになった。

2025年の3回忌には、ノルウェー国籍の犠牲者の父が「なぜ遺体が防腐処理された状態で戻ってきたのか。これが韓国での通常手続きなのか」と疑問を呈したという。

文化も、言語も違う異国で、家族を失った遺族たちは、哀しみにくれる余裕すら奪われている。

国には、犯罪を防ぎ、市民の命と安全を守る責任がある。そして、その責任は国籍によって選別されてはならない。

国家人権委員会は「国家が刑罰権を独占し、犯罪防止の責務を負っている以上、国内で犯罪被害を受けた外国人も当然、補償請求権を持つべきである」と主張している。

国家がすべての費用を負担できないならば、せめて支援のルールだけでも明確に整備するべきだ。

加害者の意思や、被害者がどの言語を話すかによって、遺族が葬儀を営む時間すら左右される――そんな現状は、あまりにも非人道的ではないか。

「悲しむ権利」を守ることこそが、真の「人権尊重」ではないだろうか。【news1 ユ・チェヨン記者】

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