アイドル練習生だったイェインさんにとっても、ダイエットはデビューのための当然の前提条件だった。事務所が課したのは「身長マイナス120」kgの体重だった。163cmのイェインさんには43kgの体重が要求された。47kgから4kg痩せるために1日3~4時間ずつ運動をし、カロリーバランスで食事をしながら耐えた。
◇「このままじゃ死ぬ」
練習生として生活しながら1年余りの期間、毎週体重を量られ、全身が収まる映像を撮られ、容貌をいちいち評価された。
事務所で体重検査を受ける金曜日まで、1週間ずっとお腹を空かせ、飢えたお腹でダンスと歌を練習した。時間ができれば歩き、夕方には水泳をした。体重が減るのが停滞すれば、1gの重さでも減らそうと、口が渇くまで唾を吐いたりもした。
苦痛だった。ただ、17~18歳という年齢が「アイドルとしてデビューするには、すでに遅すぎる」と言われてきたため、イェインさんは耐えなければ、と思った。
しかし、事務所の大人たちは、体と心が崩れていく子どもたちへの暴言を止めなかった。
大人たちはイェインさんの体を、まるで彫刻のように評価して、「どこを手術すべきか」を見積もった。
極端な絶食で貧血が頻繁に繰り返され、突然倒れることも少なくなかった。
そんな2013年初め、イェインさんはシャワーを浴びて、しばらく目を閉じ、床に倒れたままの状態で目を覚ました。
「このままじゃ本当に死にそうだ」
そう思い練習生を辞めた。
◇人生を蝕んだ後遺症…外見強迫から抜け出せない
歌手イ・ヘインさん(活動名バーバラ、35)は韓国と日本で歌手生活をしながら、2010年から8年間、向精神性食欲抑制剤を飲んだ。
薬を飲んでいるうちに耐性ができ、最大投薬容量を徐々に引き上げていった。痩せる注射を何度も打ったことがある。
精神は疲弊し続け、暴食と暴飲をして、吐き出すことも頻繁だった。
こうしたことの繰り返しが、ヘインさんの体と心に深刻な後遺症を残した。
消化器官が壊れ、慢性的なうつ病に悩まされた。骨が弱くなって、よく骨折するようになった。幻聴・幻覚に見舞われた。
(つづく)
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