ソウル市広津区の「建大(コンデ)グルメ通り」は閑散としていた。
4日午後、道路沿いの商店街では、閉店による空き店舗が目立ち、不況の影響が一目でわかる状況だった。
イ・オクヒさんの店も静まり返っていた。昨年11月末にオープンしたばかりだが、政局不安が重なり、2カ月連続で赤字となり、人員削減を余儀なくされたという。
「オープン当初は6人の従業員がいましたが、今は4人に減らしました。他に経営している居酒屋では、以前は30人いた従業員が今では9人です。人手が足りないときは週末だけアルバイトを雇っています。材料費や人件費が上がっているので、コロナ禍より今のほうが厳しいです」
◇「売り上げが80%減少」…深刻化する経営難
建大の裏通りで数十年にわたり焼肉店を経営してきたアンさん(70代)も、客のいない店内で妻と昼食を取っていた。2023年にはホールスタッフを4~5人雇えるほどの余裕があったが、今は夕方のピーク時でもホールと厨房にそれぞれ1人ずつしか配置できない。
「もう売り上げとは言えないレベルです。80%以上減りました。今は従業員を3~4時間だけ働かせて帰らせています。材料費の支払いが遅れたとしても、人件費は支払わなければならないので、借金が増えるばかりです」
◇東大門市場も閑散…「客がいても財布を開かない」
同じ日、東大門の平和市場を訪れると、状況は似たようなものだった。カラフルな帽子や手袋を見て回る外国人観光客はいたが、実際に購入する姿はほとんど見られなかった。
平和市場株式会社のキム・ミン総務課長は「市場では人件費を削減する動きが顕著になっています。1階にある大規模店舗でもアルバイトの数を減らしています。ほとんどが親族で運営されており、大きな帽子店の従業員も実際には家族です」とため息をついた。
◇増える非自発的失業者
専門家は、最低賃金の上昇による人件費の負担が、自営業者の経営難を招き、非自発的失業者や超短時間労働者(週17時間以下の労働者)の増加につながっていると指摘する。経営が厳しい自営業者が従業員を解雇したり、廃業したりすることで失業者が増え、週休手当や退職金を支払う必要のない短時間労働者の雇用が増えている状況だ。
統計庁の雇用動向マイクロデータによると、週1〜17時間だけ働く「超短時間労働者」は昨年250万人となり、2023年の226万8000人と比べて10.2%増加した。これは1980年に関連統計が作成されて以来、過去最大の規模だ。
また、昨年の非自発的退職者は137万2954人で、2023年と比較すると10万6761人(約9%)増加した。
中央大学社会学科のイ・ビョンフン名誉教授は「経済状況が厳しく、年末商戦が本格化する時期に非常戒厳が宣布されたことで、消費心理が完全に冷え込んだ。さらにトランプ米大統領の再任によって韓国企業がさらに厳しい状況に追い込まれるとの見通しが広がり、内需市場は一層深刻化している」と指摘した。
またソウル大学経済学部のアン・ドンヒョン教授は「やむを得ず自営業を始めた中高年層や高齢層が経営難に直面すると、高齢者貧困の問題につながる。政府が社会保障制度を強化してこれを補う必要があり、そのためには莫大な財源が必要になる」と述べた。
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