2025 年 11月 26日 (水)
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「脱石炭」掲げた韓国政府、電力供給と再エネ計画は“空白地帯”のまま

韓国のキム・ソンファン(金星煥)気候エネルギー環境相=気候エネルギー環境省提供(c)news1

韓国政府が石炭火力の段階的廃止を目指す国際連携「脱石炭同盟(PPCA)」に加盟したものの、産業界や専門家の間では電力需給の安定性や再生可能エネルギーの導入計画が依然として不透明であることに対する懸念が強まっている。

政府は2050年までのカーボンニュートラル、2035年までに温室効果ガス53~61%削減を公言しつつも、それを支える代替電源の具体的な計画が欠如していると指摘されている。

気候エネルギー環境省によると、国内の既存の石炭火力発電所61基のうち、2040年までに40基を先行して廃止する方針を明らかにしており、残る21基については社会的議論を経て時期を決定するという。また新規は一切、建設しないとし、COP30でキム・ソンファン(金星煥)気候エネルギー環境相が「温室効果ガス削減装置のない石炭火力発電所は新設しない」と宣言したことを受けた措置だ。

しかし、40基の停止によって20GW相当(大型原発約20基分)の供給力が失われるにもかかわらず、それをどう補完するのかという詳細は提示されていない。再生可能エネルギーによる代替の拡充計画も、今のところ明確なロードマップは示されていない。

特に、今後10~15年間で風力・太陽光などの設備容量をどれだけ増やし、系統混雑をどう解消していくかは脱石炭の実現可能性を左右する。送電網の強化、エネルギー貯蔵システム(ESS)への投資、系統接続の柔軟性といったインフラ整備の遅れも障害とされる。

さらに、データセンターなどの電力需要が急増しており、現在の8.2TWhから2038年には30.0TWhに達する見通しで、これも供給への圧力となる。

産業界では、石炭縮小そのものには賛同しながらも、電気料金の上昇やLNG(液化天然ガス)依存の強まり、エネルギー供給の変動リスクに懸念を示している。再エネと原子力をどうバランスよく活用するか、ガス火力はどの程度まで許容されるのか、現実的な「補完策」が求められている。

脱石炭同盟加入後初となる第12次電力需給基本計画(2026年発表予定)では、石炭火力削減の時期や代替電源の構成、送電網投資などが盛り込まれる予定であり、国際社会の脱炭素要求と国内の電力安定を両立できるかが注目されている。

(c)news1

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