現場ルポ
新型コロナウイルスの累積感染者が2年で1000万人を突破するなか、ソーシャルディスタンスに敏感な文化芸術市場の明暗が分かれている。国民5人に1人が感染した状況でもリベンジ旅行・リベンジ消費心理が爆発し、美術と旅行の市場は完全な回復傾向を見せているのに対し、頂点を見通せない新型コロナウイルスの感染力の強い変異型「オミクロン型」の影響を正面から受けた映画・公演市場は依然として低迷局面を脱せずにいる。
◇美術
業界関係者によると、韓国内の美術市場はコロナの影響にも関わらず、過去最大級の好況が予想される。オミクロン大流行の悪材料の中でも美術品を購入したり、文化生活のために美術館・ギャラリーなどを訪れる人がむしろ増えている。20日、5日間のイベントを終えて閉幕した「2022画廊美術祭」の成績表がこれを端的に示している。
韓国画廊協会によると、今年、画廊美術祭は約177億ウォンの売上高を上げた。これまでの最高記録である昨年の72億ウォンの2倍を大幅に上回った。入場者数も、最多だった昨年の4万8000人より、約5000人増の約5万3000人を記録した。実際に会場のソウル市江南(カンナム)区の展示場「セテック(SETEC)」入口に並んだ烈が建物を囲むほど長く、まるで有名デパートのブランド売場の「オープンラン」をほうふつさせたのだ。
通常、「画廊美術祭」で美術界の1年間の売り上げをはかるという点から、今年の美術市場の規模が史上初めて1兆ウォンを突破するという観測も出ている。昨年から不動産に代わる財テク手段としていわゆる「アートテク」が活性化した。さらに、韓国最大の財閥サムスングループの故イ・ゴニ(李健熙)元会長の「イ・ゴニ・コレクション」効果により美術館の観覧が日常的な余暇生活として認識され、関連の裾野が広がったためだ。今年、フリーズアートフェア(Frieze Art Fair)の初の韓国上陸ニュースが市場全般に火つけた影響も大きい。
これに関連し、韓国文化観光研究院が、ギャラリー・競売・アートフェア・美術館などを含めた展示件数を把握した結果、今年1~2月の展示件数が3269件で昨年同期より1412回も増えたものと推定される。オミクロンの拡散傾向に大きく影響されていないものと分析される。
◇旅行
海外旅行需要「ゼロ」が2年以上続き、存廃の岐路に立たされている旅行市場も復活の兆しを見せている。強力な封鎖原則を固守してきた防疫当局が、ワクチン接種者に対する韓国入国時の隔離を免除する案を実施してからだ。ハナツアーによると、11~20日の10日間、3200人が海外パックツアー商品を予約するなど、海外新婚旅行などを考慮する旅行客が急激に増えている。
ただ、ピークの予測が難しいコロナの拡散やロシア産原油価格の高騰によるコスト上昇などの外的要素が少なくなく、楽観できないという声もある。韓国旅行業協会の関係者は「現在、生態系が完全に破壊されており、現地旅行会社・ガイドネットワークも再び確保しなければならない上、原油価格の上昇圧力がある」とし「旅行業種が回復するための準備期間が必要なだけに、損失補償制などの政府支援が必要だ」と強調した。
◇映画・公演
一方、国民を代表する余暇生活とされる映画・公演市場は突破口を見出せずにいる。映画振興委員会によると、先月、映画館の観客数は327万人と、前月比42.9%減少し、売上高も309億ウォンと44.4%減少し、実績は半分に減った。コロナの影響で、主要国内期待作が次々と公開を見合わせたため、昨年9月から6ヵ月連続、外国映画に優位を譲り、産業全般の危機感も高まっている。
映画振興委員会は「2月初めに旧正月連休があったが、オミクロン株が大流行し、これによる期待作の封切り延期で連休期間の効果が大きくなかった」とし「話題作もなかったため、2月全体の売上高と観客数は前年同月と比べ小幅な増加にとどまった」と説明した。
ミュージカル・演劇などの公演市場は「感染リスク」に怯えている。この1カ月半の間に900万人が感染し、「ステルス・オミクロン」まで拡散して、出演者の感染も続いている。費用などの理由で、適当な代役が不在のため、主演などの出演俳優らが感染すれば、公演の延期やキャンセルは避けられない。文化観光研究院によると、今年1~2月の間に1815件の公演がキャンセルされ、実際に舞台に上がった公演は昨年の40%程度にすぎないと推定される。
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