「ベトナムに進出する企業にとって、最も重要なのは人材管理だ。我が社はこれまでチーム長級の退職率がゼロを維持している」。韓国の幸星(ヘンソン)電子ベトナム法人のチェ・スホン法人長はこう語る。同社の最大の強みは「ノウハウ管理」にあるという。
1964年創業の幸星電子は世界で17カ所の工場を運営し、年間9000億ウォン規模の売り上げを誇る電子部品メーカー。
ベトナム法人は2015年、北部ハイフォン市に設立。ベトナム法人は売り上げ全体の20%を占める重要拠点で、2023年には1700億ウォン規模を記録。10万㎡の敷地に5万㎡の工場を構え、洗濯機や冷蔵庫、車載部品などを生産している。
ベトナム進出当初、韓国企業の給与水準はベトナム企業を大きく上回り、優秀な人材を確保する上で有利だった。しかし、中国企業が高額報酬を武器に韓国企業で育成された人材を引き抜き始めると、競争は激化した。
幸星電子はこれに対抗するため、家族的な企業文化を構築した。年に一度の社員団結大会やワークショップ、定期的な懇談会を通じて、社員の悩みを把握し、迅速に解決する仕組みを整えている。
現地で7年間勤務している人事総務チーム長のグエン・ティ・クエン氏(39)は「清潔な作業環境、豊富なアクティビティ、充実した福利厚生が他社と異なる点」と述べ、社員満足度が高い理由を説明した。また、かつて中国企業に移った社員が再び戻るケースも増えているという。チェ法人長は「台風による被害の際、社員の家庭を一軒一軒訪ね、支援を惜しまなかった」と述べ、社員への「感情的ケア」が競争力の源泉であると強調した。
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