
「今度の大統領選、誰に投票すればいいんだろう?」
そんな声が、今や若者の間から頻繁に聞こえてくるようになった。これまで「政治的無関心層」として扱われ、政治から距離を置いていたMZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)に、確かな変化が生まれている。
もちろん、これまでにも政治に関心のあるMZ世代は存在していた。しかし、街頭デモや集会などには縁のなかったごく普通の会社員らが、今や臆することなく候補者を議論し、政治ニュースを自発的にチェックし、周囲に共有する姿は、明らかに以前とは異なる。
こうした政治的関心のきっかけとなったのは、やはり昨年12月3日に突如発令された「非常戒厳令」だったのではないか。
その夜午後10時30分、軍が一部施設を掌握し、戒厳が発令されたという速報が流れると、家族や友人、同僚が集うカカオトークのグループチャットは騒然となった。
「まさか本当に?」「歴史の授業でしか聞いたことがなかった話が現実に?」――こうした反応はMZ世代にとって当然のものであり、国家による「暴力による問題解決の正当化」という論理は、この世代には到底通用しなかった。
学校教育を通して民主主義の価値や法治の重要性を学んできた彼らにとって、戒厳令は“非常識で非合理的な国家権力の象徴”として受け取られた。
さらに、戒厳令を契機に始まったユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領(当時)の弾劾と政局の混乱は、株式市場にも深刻な影響を及ぼした。
トランプ米政権の保護主義的な政策も重なり、財産の多くを株式や暗号資産に投じていたMZ世代は大打撃を受けることとなった。
つまり、MZ世代にとって「非常戒厳事件」は、もはや歴史の話ではなく“自分たちの生活に直結する政治”としてリアルに体感された転換点だったと言える。
こうした体験が、6月3日の大統領選挙に向けて、政治への関心と問題意識を高める結果となった。
ただ、現在の候補者状況は彼らの選択をいっそう難しくしている。野党の有力候補は複数の刑事事件で裁判中、与党の候補は戒厳令を主導した中心人物だ。
「どちらも選べない」という声も多く、まさに「最悪を避ける選択」を迫られているような構図だ。
合理性と常識を重視するMZ世代が、最終的にどのような判断を下すのか――。その選択は、ただ1票にとどまらず、韓国社会のこれからを左右する重要な分岐点となるだろう。【news1 チョン・ユンミ記者】
(c)news1