2025 年 5月 9日 (金)
ホーム政治北朝鮮「平壌ニュータウン」に映る金正恩総書記の関心事…MZ世代狙った娯楽と食文化の演出

「平壌ニュータウン」に映る金正恩総書記の関心事…MZ世代狙った娯楽と食文化の演出

「和盛地区第3段階・1万世帯住宅」を視察するキム・ジョンウン総書記=朝鮮中央テレビキャプチャー(c)NEWSIS

北朝鮮が先月、いわゆる「平壌ニュータウン」と称される和盛地区第3段階の竣工を公開し、インターネットカフェやボウリング場、結婚式場、冷麺専門店など、韓国の都市型生活を思わせる娯楽・飲食施設が注目を集めた。

キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が新たに建設する居住エリアに近代的インフラを整備することで、若い世代――いわゆる「MZ世代」――のニーズに応え、北朝鮮を“正常国家”として演出しようとしているという分析が出ている。

北朝鮮の国営メディアは先月15日、「和盛地区第3段階・1万世帯住宅」が竣工したと報道した。キム総書記は2021年に「平壌に5年間で毎年1万世帯、合計5万世帯の住宅を建設する」と公言し、2022年の「松花(ソンファ)通り」、2023年の「和盛通り」、2024年の「林興(リムフン)通り」に続く第3段階の事業とされる。

中でも注目されたのは、キム総書記が「重要奉仕施設」と称した各種の利便施設だ。

先月4日、竣工直前の和盛地区を視察したキム総書記は「主要奉仕施設の運営準備状況」を自ら確認。韓国の高層マンションを彷彿とさせる建物と豪華な内装がメディアで詳細に報じられた。

特に話題となったのが、韓国のインターネットカフェを模したとみられる300席規模の「コンピューター娯楽館」だ。

『労働新聞』によれば、同施設を視察したキム総書記は「青少年に非常に人気が出るだろう」と述べたうえで「この施設は我が国で初めてオープンする専門娯楽サービス拠点であり、運営体制や秩序、サービス準備に特別な関心を払うべきだ」と強調した。

これは、キム総書記が掲げる「人民大衆第一主義」の一環として、若年層に向けた娯楽施設の提供を通じ、住民生活に寄与する姿勢をアピールする狙いとみられる。

また、情報統制が厳しい北朝鮮においてインターネットカフェのような施設が導入されることは、外部情報の流入リスクを伴うものの、国民がコンピューターを楽しむ姿を通して“正常な国家”のイメージを前面に出そうとする演出と解釈されている。

これについて、韓国・統一研究院のホン・ミン首席研究員は「今回公開されたインターネットカフェなどの施設は、実際の機能性よりも、当局が国民の福利厚生向上に努力していることを誇示するためのもの」と指摘する。

また、飲食施設では、北朝鮮を代表する冷麺店「玉流館」を彷彿とさせる「和盛閣(ファソンガク)」が目玉として登場した。

労働新聞は昨年9月、1000人以上が収容できる敷地面積2万6000㎡の和盛閣がオープンしたと報じた。1号館では平壌冷麺をメインに、結婚式場としても利用でき、2号館ではプルコギなどさまざまな料理を提供しているという。

このほか、花屋や金魚専門店などの小売店も併設され、和盛地区が単なる住宅地を超えて、内需拡大を目的とした複合型商業エリアとしての役割も期待されている。

(c)news1

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