ソウル・梨泰院(イテウォン)雑踏事故当日の先月29日、警察の112システムが事実上「不通」だったことが明らかになった。事故発生4時間前から続いた市民の「圧死」警告は無視され、コントロールタワーの役割を果たさなければならない警察庁長官は、大統領よりも遅い時間に状況報告を受けた。
警察内外では3年前、出頭した容疑者を警察官が別の警察署に行くよう追い返した「漢江胴体遺棄事件」を機に112当直体系が全面改編された。だが「慣行」の前に無用の長物になったとささやかれる。夜間に状況を総括しなければならない112状況管理官は席を外しており、対応はもちろん、報告体系まで崩れる結果につながった。
◇警察首脳部の事態把握、大統領よりも遅れ
事故当日、ソウル地方警察庁112治安総合状況室の状況管理官の当直者は、ソウル警察庁のリュ・ミジン人事教育課長(総警)だった。しかし、ソウル警察庁の状況室にいたはずのリュ総警は、この時間には本人の事務室にいたという。
リュ総警は事故発生から1時間24分が過ぎた午後11時39分になって112治安総合状況室チーム長(警正)から事故報告を受け、状況室に復帰したことが確認された。
状況管理官の「遅刻」は、そのままソウル警察庁長官、警察庁長官につながった。キム・グァンホソウル警察庁長は、午後11時36分になってようやく自分の代理を務めた状況管理官ではなく、ソウル龍山警察署長から初めて現場報告を受けた。
「治安状況報告」も30日午前0時2分になって警察庁に上がり、ユン・ヒグン警察庁長官も30日午前0時14分に警察庁状況1担当官からの電話で事故の報告を受けた。
消防当局の報告を通じて、午後11時1分に事故報告を受けたユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領よりも警察首脳部の事態把握が遅れたわけだ。
◇3年前の事故でソウル市庁の当直システム強化、だが…
現在、ソウル警察庁は日課時間以後には112治安総合状況室長の代理として総警級警察官を「状況管理官」に置き、112状況室を24時間運営する当直体系を持っている。
平日の日課時間(午前9時から午後6時)には112治安総合状況室長が112通報受付および指令、初動措置について指揮する。状況管理官の当直者は、夜間および休日勤務時に発生した事件事故などについて、ソウル警察庁長と上位機関である警察庁状況室に報告する役割をする。
休日の場合、状況管理官の当直者は昼間勤務全般(午前9時~午後1時)と夜間勤務全般(午後6時~午前1時)は状況室に、昼間勤務後半(午後1時~午後6時)と夜間勤務後半(午前1時~午前6時)には本人の事務所に待機することになっている。
当直指針によると、リュ総警は梨泰院事故発生当時、状況室にいなければならなかった。指針に従わず自分の事務室にいて、結局、事故の知らせを一歩遅れて認知したという。
警察庁特別監察チームは「リュ総警が業務を怠慢に遂行した事実を確認した。リュ総警に待機発令し、捜査を依頼することにした」と明らかにした。
現在の警察当直システムは2019年、「漢江胴体遺棄事件」で、ソウル警察庁に出頭した容疑者を送り返した事件を機に全面改編された。
警察は当時、中間管理者である総警級警察官の役割と責任を強化し、ずさんな対応を防ぐ方針を固めた。ソウル警察庁の夜間・休日の国民請願(民願)処理総合対策によれば、夜間および休日当直時に発生するすべての民願および当直状況に対して状況管理官に報告し処理可否を決めるようにした。
また、以前は週末だけ総警級警察官が状況管理官を務める勤務体系を平日夜間にまで拡大したりもした。
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