ソウル市広津区(クァンジング)のあるダンス練習室。先月31日、トレーニングウェア姿の3人がインスタグラムに載せるためにロッキングダンスの映像を撮影していた。
ロッキングダンスとはストリートダンスの一つで、ファンキーな音楽に合わせて体を震わせたり止まったり回転したりする。
彼らが活動するダンスクルーの名前は「ファイブロック(5Lock)」。2000年生まれのダンス専攻者2人、1999年生まれのダンス専攻者1人、1996年生まれのフリーランス会社員、そして1965年生まれで今年58歳のシン・ヒソプさんがメンバーだ。
2週間に1回集まってダンスの振り付けを作り、1~2分のショートフォームコンテンツを製作する。映像再生数は170万回を超える。
人気アイドルグループ「S.E.S.」のメインボーカルだった歌手パダや、韓国を代表するダンサーLia Kim(リア・キム)は、シンさんに「コラボレーションをしたい」というコメントを残した。
50代後半のシンさんはどうやってMZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)とストリートダンスを始めることになったのだろうか。
◇「賃金ピーク制」の対象
スポーツ関連の準政府機関で31年間働いてきたシンさんは昨年7月、定年を延長する代わりに年俸を減らす「賃金ピーク制」の対象となった。チーム長、室長、本部長、専門委員を歴任してきたシンさんには苦い提案だった。
引退後の人生について悩み始めたシンさんは「これ以上、年を取る前に、あこがれていたダンスの教室に行こう」と誓った。
市民が集まって踊る「ソウル生活芸術フェスティバル2022」の開催を知り、オーディション映像を送った。年配であり、ダンスもつたない。それでも2.5倍の競争率を勝ち抜いて最終の40人に選ばれた。
オリエンテーション初日、集まった40人の大部分は20~30代。ダンスを専攻する者も10人以上いた。シンさんは唯一の50代だった。行ってみて恥ずかしくなり、「明日からは来ない」と言った。だが他のメンバーから「僕たちが助けるから信じてついてきて」と説得されたという。
40人のメンバーは2カ月半の間、週に1回2時間ずつ集まってロッキングダンスを練習した。
◇「私たちはただ、ダンサー友達」
そして公演は成功した。シンさんは胸がいっぱいになった。
メンバーとは世代を超えた親しい間柄になった。フェスティバルが終わった後、シンさんは5人でショートフォームコンテンツを作ろうと提案した。そうして誕生したのが「ファイブロック」だった。
5人は「違いを認める姿勢で世代間の壁を破ることができた」と声をそろえる。シンさんの世代は物事を進めるにはまず代表者を選ぶことから始めるが、若い世代はカカオトークのチャットルームを作って自律的に役割を分かち合い、アイデアを共有した。
「若い友人たちを見ながら、ありがたく、そして申し訳なかった。時代が変わったこと、私たちの世代に足りない点があることを認め、コミュニケーションを取る必要がある」
シンさんはこう実感した。
メンバーたちはシンさんを「お父さん」と呼ぶ。むしろシンさんの存在こそありがたかったと言う。
ファイブロックのメンバーであるキム・ハリムさんは「お父さんは私たちが方向性を示すと、いつも黙々とついてきてくれ、一度も非難したことがない」と笑った。同じくメンバーのチャ・スビンさんは「私がダンスでは先輩なのでリスペクトしてくださる面がある。信じて任せてくれるから、ますます親しくなれる」と語った。
シンさんの引退後の目標は「ダンス伝道師」になることだ。
ファイブロックは今年のバスキング(路上パフォーマンス)公演だけでなく、クリスマス公演も開催する。メンバーたちは最後にこう言った。「踊るのに年齢は関係ない。私たちはただ、長い間一緒に踊りたいダンサーの友達です」
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