2025 年 10月 14日 (火)
ホーム社会「国家必須医薬品」指定は増えても薬は消える

「国家必須医薬品」指定は増えても薬は消える [韓国記者コラム]

ソウル市内の薬局で処方薬を受け取る市民ら(c)news1

韓国で国家必須医薬品の指定数は年々増えているが、薬局の棚の空白は依然として埋まらない。ラベルに「必須」と書かれても、製薬工場が自動的に稼働し、倉庫が自然に満たされるわけではない。

医薬品は原材料の調達から製造、流通までのどこか一つでも揺らげば全体が止まる繊細な供給網の上に成り立っている。特に安価な必須医薬品ほど利益率が低く、原材料価格が上がればすぐに生産停止や在庫枯渇に追い込まれる。単に「義務」として指定するだけでなく、企業が持続的に供給できる補償や安全装置を整える必要がある。

製薬業界では、政府が最低購入量を保証し、平時は病院や薬局で消費された分を政府が後から買い上げる「循環型備蓄制度」など、持続的な生産を支える制度設計を求める声が強い。現行の「最安値落札制度」は短期的には予算節約につながるが、品質や安定供給には悪影響を及ぼし、長期的には必須医薬品の維持を妨げる要因となっている。

そのため、常時確保分にはプレミアムを付与し、供給中断には罰則、原材料費高騰時には自動調整を盛り込む「リスク分担型契約」が必要だという指摘が相次ぐ。

また、行政機関の縦割りも課題である。食品医薬品安全処は警戒や許認可・供給管理を担い、保健福祉省は保険・薬価・請求システムを通じて後方支援するなど、「指定→生産→備蓄→流通→代替処方」という一連の流れが切れ目なく連動する体制が不可欠だ。

政府も「必須医薬品の公共生産・流通ネットワーク」構築を進めているが、これまでの試みが大きな成果を上げられなかった点を踏まえると、楽観はできない。

本来、国家必須医薬品の核心は「指定」ではなく「運営と管理」にある。価格・供給量・品質を一体化した契約モデル、地域ごとの在庫をリアルタイムで把握できるデータシステム、そして省庁間の壁を越えた情報共有が必要だ。いずれかの環が緩めば、その空白を埋めるのはいつも患者自身である。【news1 チャン・ドイン記者】

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular