韓国・京畿道(キョンギド)富川市(プチョンシ)のホテル火災の際、救助のために使用された空気安全マット(エアマット)がその役割を果たせなかった。命を救う「最後の砦」として信頼されていたエアマットに対する信頼が揺らぎ、今後、誰がエアマットに身を投じるのかという懸念が広がっている。
今回の事故では、男女の宿泊客がエアマットを「命のマット」と信じて飛び降りた。しかし、女性宿泊客は跳ね返され、エアマットがひっくり返る事態が発生し、続いて飛び降りた男性も死亡した。専門家からはエアマットの転覆が極めて異例だと指摘され、設置ミスや有効期限切れのマット使用など、さまざまな疑惑が浮上している。
22日午後7時34分ごろ、京畿道富川市の9階建てホテルの7階客室(810号)で火災が発生した。同じ階に宿泊していた2人の宿泊客は、炎を避けるために消防が設置したエアマットに飛び降りたが、命を落とすことになった。
富川市消防署は、火災通報を受けてから4分後の午後7時43分ごろに現場に到着し、その5分後の午後7時48分にホテルの外にエアマットを設置した。このマットは、横7.5メートル、縦4.5メートル、高さ3メートルのサイズで、10階以下の高さから飛び降りるために設計されている。空気が注入されていない状態での重さは126キロという。
エアマットが設置されてから7分後の午後7時55分ごろ、女性が最初に飛び降りた。だが、マットの中央ではなく端に落下した。その瞬間、エアマットは反動でひっくり返った。元の状態に戻す前に飛び降りた男性は、そのまま地面に落下し、二人は心肺停止の状態で病院に搬送され、その後、死亡が確認された。
専門家らはエアマットの転覆が異例だと口を揃える。
転覆の原因については、詳細な調査結果が出るまでわからないが▽マットが適切に設置されていなかった▽有効期限が過ぎたマットが使用された――などの可能性が浮上している。今回使用されたマットは2006年に支給されたもので、使用可能期限は最大7年とされている。
又石(ウソク)大学のコン・ハソン教授(消防防災学)は「エアマットがひっくり返ることは非常に珍しい。通常はひっくり返らない。空気圧が過剰な場合や、エアマット自体に不具合があり圧力を均等に保てなかった場合、外部からの衝撃を受けてひっくり返る可能性がある」と説明した。
慶一(キョンイル)大学のイ・ヨンジュ教授(消防防災学)も「マット自体がひっくり返る状況は本当に異例だ。消防隊員がエアマットを押さえているべきだ」と指摘する。
富川市消防署火災予防課長であるイ・サンドン氏は、現場でのブリーフィングで「最初はエアマットは正常に展開されていた。犠牲者が飛び降りる過程でひっくり返った」と釈明した。
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