現場ルポ
韓国では受動喫煙対策を強化する立場から、禁煙区域が段階的に広げられてきた。野外の禁煙区域では、保健当局所属の臨時職員らが「取り締まり員」として、たばこを吸う人の摘発に乗り出している。だが、その現場では「苦役」ともいえる難題が待ち構えている。
今月14日午後、ソウル市麻浦(マポ)区の公園。ここで20代男性がたばこを吸っていた。この公園は禁煙区域だ。ベンチと地面のあちこちに「禁煙区域」の印が貼られていた。しかし、男性は気にしないようだった。
喫煙を取り締まるイ・ヒスク主務官(仮名)が男性に声をかけると、次のような言葉が返ってきた。「過怠金を払った。だから1時間、たばこを吸ってもいいか」
これにとどまらなかった。男性はイ・ヒスク氏の顔に向かって2秒ほど白いたばこの煙を吐き出した。「あなたの名前を教えてくれ。国民申聞鼓(国民請願)に投稿する」
イ・ヒスク氏は7年間、取り締まりの仕事に従事している。禁煙区域で喫煙して注意され、「逆切れ」する人たちには、まだ慣れていない。「息子のような人たちがああいう行動に出れば、もちろん腹が立つ。怒りでご飯が喉を通らない時もある」
もう1人、キム・ジヒョン主務官(仮名)。10メートル先で喫煙者を摘発した。ある喫煙者は「(公園が)禁煙区域だとは本当に知らなかった。ほかの人もたばこを吸っているぞ」と抗弁した。オフィスの同僚とみられる隣の男性は、電子たばこをポケットに隠した。
文化公園には2~3メートル間隔でたばこの吸い殻が落ちていた。
約20分の間、文化公園だけで摘発されたのは4人。ふたりの主務官は休む暇もなく、業務用の車に乗って、次の目的地に向かった。
喫煙取り締まりは午前と午後の3時間ずつ。一度の出動で平均3~4カ所、多ければ7カ所で取り締まりを進める。
ふたりの主務官ともたばこは吸わない。なのに、たばこのにおいを嗅ぎながら取り締まりをするのは苦役だ。喫煙者にたくさん会った日の夕方、常に、喉が痛くなるという。
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